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「空気感や質感の描き方、絵の下調べと参考書籍」タカヤマトシアキ先生Q&A連載 第二弾 第2回

 

こんにちは!GENSEKIマガジン編集部です。

以前の記事でクリエイター全力応援コンテスト「異形の神々」オンライン講評会をレポートしました。

オンライン講評会では、イラコン応募者のみなさんに質問を募り、タカヤマトシアキ先生に答えていただくQ&Aの時間がありました。その内容を今回も「タカヤマ先生Q&A連載 第二弾」として再構成し、全3回の連載としてお届けします!

第二弾 第1回「キャラデザやオリジナリティ、苦戦して学んだこと」
第二弾 第2回「空気感や質感の描き方、絵の下調べと参考書籍」(この記事)
第二弾 第3回「ペン設定や配色について、仕上げの色の見極め」

答えてくれた人

タカヤマトシアキ(X:@tata_takayamaWebGENSEKI
デュエル・マスターズ、ヴァンガードなど様々なトレーディングカードゲーム(以下TCG)でメイン・パッケージイラストを手掛けるイラストレーター。クリーチャーやメカニック、リアル系まで幅広い画風をもつ。


Q.イラストを描くときに意識していることはありますか?

A.「自分が何を表現したいのか」を念頭に置く。

タカヤマ先生

イラストで意識していることは、「自分が何を表現したいのか」を中心に置いて描く、ということです。

例えば大きいモンスターのイラストを描くとしましょう。TCGの場合は「パッと見の迫力」を最重要視しています。オリジナル創作でシチュエーションとして描く場合は、説明的な絵にならないよう、「自分がそこにいて、見上げているような感覚」を最後まで持ったまま描くことを大切にしています。


Q.厚塗りのコツを教えて下さい。

A.ライティングを意識する。


タカヤマ先生

アニメ風イラストは線画で何が描いてあるか表現できますが、厚塗りではそうもいきません。陰影で形を表現する必要があるため、よりライティングを意識して描くことが重要です。

出撃!空中戦


Q.先生のように、空気感を損なわないまま情報量の多いイラストを描くには、どうしたらいいですか?

A.背景の色を重ねて前後感を表現。


タカヤマ先生

まず、情報量を増やすには、やはりある程度描き込みましょう。そして空気感は、遠景をある程度描き込んだあと、上から背景の色を重ねると距離感が出ます。青空が広く描かれているなら青色、といった具合です。それから近景になる手前の部分は、陰影とライティング、質感表現、細かいディテールまでしっかり描きましょう。

剣を持った絵で例えると、手前に出てきている柄や鍔の部分、刀身のディテールはしっかり描く。腰の後ろに鞘が回っている奥側は、陰影とハイライトぐらいで描き飛ばす。実際は1メートルも離れていないのでそこまで見え方に差は出ないはずですが、その差をあえてつけることで前後感を出せるので、普段から意識して描いています。


Q.質感を出すには、どう描いたらいいでしょうか?

A.描きたい質感を細かく突き詰めよう。


タカヤマ先生

自分がどういう質感を表現したいのかを突き詰めましょう。例えば金色のパーツを表現したいときも、カッパー系のような赤っぽい金もあれば、シャンパンゴールドのような色、磨ききれてない曇った金色、ピカピカの金色……などいろいろあります。

具体的な色を決めたら、その色にどうライティングが入るのかなども考えます。こんなふうに描きたいという質感を自分の中で明確化してから、資料をしっかり揃えるといいです。

 

青龍騎士


Q.絵を描く前の下調べにとても時間がかかってしまいます。先生は資料集めはどうしていましたか?仕事で締切がある中、どう時間配分していますか?

A.下調べの蓄積は財産になるので、最初は時間がかかってもいい。


タカヤマ先生

今はネット検索やPinterestなどで調べれば、知りたい資料はたくさん出てきますが、僕が駆け出しのころは、探すのはとても大変でした。ドラゴンの資料を探そうと思っても、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のような爬虫類系のものか、初期のポケモンか、というぐらい極端でした。それで何かの本の端にちらっと載っているようなものを探し続けて真似したりして、理想に近づけていました。

僕の場合は、そうやって長く仕事をこなしてきて、20年くらいの下調べの蓄積があるので、資料はある程度頭に入っています。今は、ラフを長いときで1日ぐらいかけて描いて、そこから発展させるときに資料を集める程度です。それも、特別なモチーフを描くときぐらいですね。

ただ、資料をあまり集めないといっても、例えば武将を描くときなら甲冑の資料を10枚ぐらい、背景に描く空の感じを10枚ぐらい……というふうに、さまざまな箇所の資料を用意します。結果的に1枚のイラストに40枚ぐらいにはなります。ライティングの資料で3Dのポーズ画像を作ることも含めると、50枚ぐらいになることもありますよ。

はじめて描くものが多いと、蓄積がないぶん長い時間をかけて調べることになると思います。それでも調べることで蓄積ができるので、まずは時間をかけていいと思います。

 

Q.絵を描くときに参考にしている書籍はありますか?

A.写真資料、ポスター画、絵画作品、教本など。


タカヤマ先生

常に参照する資料と決めているものはありませんが、戦国ものを描くときは『歴史群像シリーズ特別編集 決定版 図説・戦国甲冑集』(学研)を見ます。写真資料なので、実際の質感や構造が読み取れてとてもいいです。

それから、生賴範義(おうらいのりよし)先生のポスター画や、アルフォンス・ミュシャの『スラヴ叙事詩』のような作品です。遠景や近景が複雑にからみあっているのに、色彩が豊かでなおかつまとまっているので、同じようなポスターの絵を描くときなどは参考にさせていただいています。

写実的に人物を描くときは、A. ルーミス先生の『やさしい顔と手の描き方』を参照します。

最初から資料を見て描くというより、描いていて行き詰まったときに資料を確認する、という使い方が多いです。例えば、甲冑に関する情報なら、まずテキスト部分を読んで、形状や使い方などを知識として頭に入れておきます。絵を描きながら参照するだけでなく、描く前やちょっとしたスキマ時間で事前把握しておくと、描くときにも役立ちます。

描きながらそれを思い出して「今回は戦国の武将だけれど、創作世界なので鎌倉時代の大鎧も取り入れよう」というようなことができるようになります。


>>>第二弾 第3回「ペン設定や配色について、仕上げの色の見極め」に続く

 

第二弾 第1回「キャラデザやオリジナリティ、苦戦して学んだこと」
第二弾 第2回「空気感や質感の描き方、絵の下調べと参考書籍」(この記事)
第二弾 第3回「ペン設定や配色について、仕上げの色の見極め」


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執筆kao(X:@kaosketchWebGENSEKI

編集斎藤充博(X:@3216WebGENSEKI