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「ペン設定や配色について、仕上げの色の見極め」タカヤマトシアキ先生Q&A連載 第二弾 第3回

 

こんにちは!GENSEKIマガジン編集部です。

以前の記事でクリエイター全力応援コンテスト「異形の神々」オンライン講評会をレポートしました。

オンライン講評会では、イラコン応募者のみなさんに質問を募り、タカヤマトシアキ先生に答えていただくQ&Aの時間がありました。その内容を今回も「タカヤマ先生Q&A連載 第二弾」として再構成し、全3回の連載としてお届けします!

第二弾 第1回「キャラデザやオリジナリティ、苦戦して学んだこと」
第二弾 第2回「空気感や質感の描き方、絵の下調べと参考書籍」
第二弾 第3回「ペン設定や配色について、仕上げの色の見極め」(この記事)

答えてくれた人

タカヤマトシアキ(X:@tata_takayamaWebGENSEKI
デュエル・マスターズ、ヴァンガードなど様々なトレーディングカードゲーム(以下TCG)でメイン・パッケージイラストを手掛けるイラストレーター。クリーチャーやメカニック、リアル系まで幅広い画風をもつ。


Q.お使いの描画ソフトと、よく使うペンの設定を教えて下さい。

A.デフォルトのリアル鉛筆と繊維にじみ。

タカヤマ先生

ソフトはCLIP STUDIO PAINT PROで、ブラシはデフォルトの【リアル鉛筆】です。それでチョンチョンと色をおいて、サブツールの「色混ぜ」の【繊維にじみ】でなじませたり、グラデーションをつくります。基本的に描画は最初から最後までデフォルトのこの2つです。描いている様子は僕のYouTubeチャンネルの動画でも見られるので、興味があればのぞいてみてください。

パソコンを買い替えたり、CLIP STUDIO PAINT以外のソフトを使ったりすることもあります。環境が変わってもストレスを感じないようにしたいので、なるべく特別なツールやブラシを使わず描けるようにしています。


Q.色を決めるのはどのタイミングですか?

A.色は最初に決まっていることが多い。


タカヤマ先生

オリジナル創作では、頭の中でキャラクター設定を考えるときに色も決まります。仕事でも色はあらかじめ決まっています。なので、どの場合でも色は絵を描き出す前に決まっていますね。白いキャラクターが青い空に飛び立っていると映えるな、といったイメージでラフを描きだしてシルエットや構図を決めます。


Q.キャラクターの配色を決めるとき、どう考えているのかを教えて下さい。

A.絵の使われ方と、キャラクターのイメージで決める。


タカヤマ先生
キャラクターの配色は、基本的に2色と差し色ぐらいで考えます。そして絵が使われる対象によってトーンを変えています。

子ども向けやTCGの場合なら、渋い色は使わず赤白青、緑黄青、といったイメージがわかりやすい原色を使うようにします。『指輪物語』のようなハイファンタジーであれば派手な色は使わないようにして、グレイッシュなトーンでまとめつつ、色彩が感じられる差し色でキャラクター性を出す、といった感じです。

いずれにしても、パッと見たときにそのキャラクターのイメージがダイレクトに入ってくるような、わかりやすい配色パターンを心がけています。

 

異形の神々


Q.色の扱いが得意ではなく、複数の色を調和させようとすると立体感が出なかったり、単調になってしまいます。色を塗るときに意識していることを教えて下さい。

A.彩度の低い色から塗り始め、ライティングを明確に描く。



タカヤマ先生
最初から彩度が高い色を置いてしまうと、描き進めるのが難しく、どこを見たらいいのかわからない絵になってしまいがちです。

そこで、僕はまずラフの段階で大きく色を乗せるとき、カラーサークルの中央より左側の、彩度が低い色から塗りはじめます。そしてだんだん中央ぐらいの色を使い、一番見せたいところや光の当たる部分に、右側の彩度や明度が高い色を使います。

影は正確に描きすぎるとごちゃっとすることがあるので、「どこから光が当たっているか」のライティングを明確にするといいでしょう。

「明るいところと見せたい部分だけ彩度と明度を高くする」と意識して描けば、情報をコントロールできるようになります。赤青など複数の色があるキャラクターでも、ライティングがしっかりしていれば立体感が出て、まとまり感も出せると思います。

ところで、「色味を調和して描こうとすると単調になってしまう」という相談者さんのお悩みは、自分も経験しました。色の扱いが得意と言っている人はあまり見ないので、みんなが難しいことなのでしょう。


Q.仕上げについて。モニターや発表媒体によって色の見え方が変わると思うのですが、最終的な色は何を見て調整しますか?

A.しっかり絵が描けていれば、あとは気にしない。


タカヤマ先生
仕事を始めた当初は僕も気にしていましたが、いろいろ悩んだ末、もういいか、となりました(笑)。

デザイナーさんは完成形を予想して印刷所ともやり取りするので、最終的な色の出方も気にすると思います。でも文字入れやデザインする前の、僕たちが担うようなイラストの時点では、モニターで全体を見てきれいに見えてればOK、とすることにしました。

照明、紙の材質や厚さ、拡大縮小や印刷所の特性など、色の見え方は納品した先の環境や扱い方でいくらでも変わるので、考えてもきりがないんです。モニターのキャリブレーションをするという手もありますが、プロに頼むとすごい費用が掛かるし、モニター自体もいずれ劣化します。本来の色が出てないと描いた自分にはわかりますが、絵がしっかり完成していれば、見る側の人にはちゃんとしたものに見えると思います。

ひと月に何枚も絵を描いていて、一つ一つの絵でそれを気にしていたら大変です。イラストの時点では、自分で見たときに全体が「いい感じ」に描けていれば、それでいいんじゃないでしょうか。

 

第二弾 第1回「キャラデザやオリジナリティ、苦戦して学んだこと」
第二弾 第2回「空気感や質感の描き方、絵の下調べと参考書籍」
第二弾 第3回「ペン設定や配色について、仕上げの色の見極め」(この記事)

 

タカヤマ先生のQ&Aインタビュー、いかがだったでしょうか? タカヤマ先生のお話が聞ける記事はマガジンにたくさんありますので、ぜひご覧ください。

タカヤマ先生審査員のイラストコンテストや講評配信は、今後も開催予定です。次の機会に、ぜひご参加ください!

 

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執筆kao(X:@kaosketchWebGENSEKI

編集斎藤充博(X:@3216WebGENSEKI