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【動画あり】みずみずしさと儚さ、透明感ある色彩と厚塗り表現-oo6《GENSEKI イラストメイキング #4 》


毎回、動画と記事でイラストを解説する『GENSEKI イラストメイキング』。

第4回は、透明感のある色彩と、繊細な表現で人気のイラストレーター・oo6(おーおーろく)さん。


oo6さんらしいみずみずしさに、紅葉の赤色が映える、不思議な調和の取れた厚塗りイラストをProcreateで描いていただきました!

▼完成イラスト


▼メイキングを動画で見る

www.youtube.com



「透明感のある配色」「水と光の表現」「厚塗りでクオリティを上げていく描きこみ」を中心にご紹介します。

oo6さんとGENSEKIディレクターのポイント解説もぜひ、じっくりご覧ください!

▼プロフィール

oo6(Twitter:@oo6____6oo
SNSを中心に活動し、2023年1月現在Twitterフォロワー14.2万人のイラストレーター。現役大学生でありながら、ゲームのPRイラストなど商業イラストも多数手がける。アナログ、デジタルを問わず儚くみずみずしい印象のイラストを制作し、独自の鮮やかな色彩と透明感のある画風が10・20代の女性を中心に人気を集めている。『ILLUSTRATION2022』掲載。

▼作業環境

デバイス:iPad Pro 11インチ、Apple Pencil
ソフト:Procreate

<ポイント解説:アナログの画材、デジタルとの使い分けについて>

アナログ制作時は透明水彩を使っています。
原画を展示するときなど、アナログの質感を感じてほしい場合に透明水彩で制作しています。


ラフ




薄くした大ラフを下敷きに、ラフ線画を描く。

 



線画を描き終えたら、全体にベースの色と陰影を置いていく。
この時点で赤色、水色、白、黒、と配色の構成がまとまる。

 


ラフで乗せた色の彩度を上げ、明るく薄く見えるよう調整し、
さらに顔や首に影を重ね塗りする。
塗った影を、青みがかった透明感のある色に色調整する。

<ポイント解説:影色の調整について>

このような場合、【塗りつぶしツール】や【カラー変更ツール】を使って調整しています。
先に塗った色と混ざったような効果が出るので、よくこの方法で塗っています。

 



奥の髪に明るく彩度の高い水色を置き、光が透けた髪の透明感を出す。

 


キャンバスサイズを広げる。
別レイヤーで顔と体のアタリを描き、骨格のバランスを確認してから描き足す。

 


モチーフの形を濃い色のブラシで縁取って描き込む。
背景の紅葉や手に持つ紅葉を描き足す。白色で左下の水の波紋を描いたら、ラフが完成。

 

<ポイント解説:参考資料や、構図、配色センスについて>

外出中、心がときめいた自然の風景をカメラにおさめてテーマに利用することが多いです。

あとは人物をメインに描くことが多いので、構図や人物の魅力の引き出し方の参考としてPinterestでポートレートの作品を眺めながら作業しています。
前回のインタビューで名前をあげた作家さん方の作品からも創作意欲をもらっています。

いい作品を眺めながら作業すると筆が捗るので、いつも描いている時にそういった参照画面を横に並べるのが、絵を描くときのスタンダードなスタイルになっています。
参考にすることもありますが、ただ鑑賞して楽しんでいることが多いです。

色については、デジタルを始める前は透明水彩を使っていたので、今でもその時の色作りの感覚が残っているのかもしれません。
あと、どんな時でも配色のいいものが目に入ったらすかさず写真を撮って保存しています。配色、色そのものに関してオタク的な感情を持っているので、ほぼ趣味でやっていることが自然とインプットされていると思います。


塗り・描きこみ

線画や下塗りを分けず、描き込むレイヤーの追加や統合を繰り返しながら、厚塗りで描いていく。

レイヤーの例

バランスを見ながら全体を少しずつ描き込んでいくため、ここからはモチーフごとに解説する。

 

・髪の描きこみ


ブラシのサイズを小さくし、細い線でよりこまかく影や髪の流れを描き込んでいく。

 


髪の先端に白く水しぶきの表現を入れ、流れを感じる水滴なども描きこむ。

 


髪の彩度を色調整で明るく鮮やかにしてから、濃い影や細い毛束をさらに描いていく。

 


髪の輪郭は、ラフで描いた黒い線の上から、青を重ねて形を整える。
同じ青で髪の影の流れも描き、具体的な髪の形を作りつつ、黒の輪郭をなじませていく。

 


奥の髪を彩度の高い水色で塗りつぶしてから、中を白でさらに塗り、形を整える。
こうすることで奥の髪の輪郭が、鮮やかな色でぼやけたようになり、光が透けるような表現になる。

髪に使用している水色一つとっても、青寄り・緑寄り・彩度の低い色、グレー寄りなど、何色も使い絵に変化を出している。

 


紅葉や瞳と同じオレンジ色を、髪にも所々描き入れる。
画面全体の色が偏らないよう、細かく色を散らしてバランスを取っている。

 


ツヤ感を入れたい部分は、濃い影色を置き、ぼかしツールでなじませて滑らかにする。

 


白で髪の輪郭を起こし、背景と差を付ける。
ブラシを小さくし、細い線で髪の1本1本を描き入れる。

 


背景の紅葉を塗る際に、同じ色を髪にも淡く乗せ、ぼかしツールで馴染ませる。
髪の滑らかなツヤを表現し、紅葉と髪の近さも出している。

 


さらにそこに影を追加し、より髪と紅葉の位置感を出す。

 



<補足解説:Procreateのブラシ>


oo6さんは線や描きこみにブラシの【ティンダーボックス】を使用しています。
もともと透明度があり、テクスチャもついているため、滲んだようなアナログ感ある線が描けます。

また、Procreateにはブラシのコントロールができるサイドバーがあり、左手でブラシサイズや透明度を変えながら右手で描く、というようなことが直感的にできます。

oo6さんはこの操作で、ブラシサイズだけでなく透明度も、その都度こまかくコントロールしながら描き進めています。

 

・肌の描写


肌の色は白っぽく、影は青みがかった色を置くことにより、透き通るような肌を生み出す。

 


また、肌の輪郭や、影と明るい部分の境界に彩度の高いオレンジを入れて、肌の赤みや光の当たる表現を足している。

 


髪との境界や二重の溝なども、同じような濃いオレンジで輪郭をはっきりさせる。

 

・服の描きこみ


セーラー服は実際のものよりも大きくはっきりと明暗や色の変化を付けながら、シワの影や形を整える。
シワで布らしさを出しつつ、実際よりツヤのある質感を出している。

 


【ぼかしツール】を円ブラシで使用し、服の襟が水に透ける部分のラフ塗りをなじませる。

 


服の影に、髪の影の青色を入れてなじませ、反射光の様な効果とみずみずしさを加える。
ほかのモチーフと色をリンクさせることで、画面全体の色のバランスも偏らないようにしている。

 

 

・目の描写


目は、白目と瞳の境界が淡くにじんだような儚い表現で描く。

 

髪の影の青色を瞳に加えたところ

スカーフのオレンジや、髪の影の青など、画面に新しく色を増やした時は、その都度目にもその色を加え、各モチーフとリンクさせる。瞳に映る光の効果にもなっている。

 


白や黒でまつ毛を縁取り、不透明度の低い白で少し透けるようにひし形のハイライトを描き入れる。

髪に隠れる部分は、髪の流れに合わせて細い線を上から重ね、隙間から目が透けるような表現にする。

 


目の描きこみは特にズームして、細かく描きこみ、全体を見た時に一番はっきりと密度が高くなるようにしている。

 

・背景と葉の描きこみ


乗算レイヤーで色を重ねながら影や形を描きこみ、ソフトライトレイヤーで画面にオレンジ色のニュアンスを足す。

 

上からソフトライトレイヤー(Sl)・乗算レイヤー(M)/乗算レイヤーの中身

乗算レイヤーに、黒や濃い赤色で紅葉の輪郭のギザギザ・影・葉の模様を描き込んでいく。
分けたレイヤーの紅葉を色調整で鮮やかにして、距離感を出す。

 


元々の描画レイヤーの紅葉の部分に薄く白色を重ね、淡くする。
さらに奥の葉を増やして、葉の重なりを表現する。

 


ブラシの細い白線で、紅葉の葉の形を描きこみ、さらに輪郭をはっきりさせる。

 


色調整して淡くなった背景の端の部分に、濃いグレーで描きこんで深みを出す。

 

・水滴と水の波紋の描きこみ


ラフの時点で波紋や水滴の大まかなアタリも描き、目立つ部分は白で縁取る。

 



水の流れや水滴の輪郭をさらに白で描き入れ、周りの色をスポイトして、影の部分や水に透ける奥の色を塗る。

手前や顔周りは細かく描きこみ、画面の端や背景などではラフな描写に留め、手数の差で絵全体のピントにバランスを作る。

 


他の部位を塗っていて色数が増えたら、またその色をスポイトし水滴の描写に細かく塗り重ねていく。

 


全体を塗り進めたバランスに合わせて、水の流れを強調する水滴を追加する。

 


髪の濃い青の影色で、水滴の中にも濃い影を作り、白い輪郭とハイライトを強調する。
彩度の高い水色で髪を描きこむときに、制服の黒に埋もれた水しぶきの部分も塗りこみ、形を手前に出す。

 


水の波紋は、白色で塗った後、ぼかしツールでところどころなじませてツヤを出す。

 


髪から拾った青や水色、奥に透けるモチーフの色をスポイトし、水の流れのゆらぎを作りながら塗りこんでいく。

 


水の波紋をぼかして描くだけではなく、影や光の映り込みの輪郭線を白や黒の細い線で描きこむことで、波の形を意識させつつ、タッチに変化を加え、画面の描きこみ量も増やしている。
(水のメイキングはGENSEKIマガジンインタビューにも掲載)

 

<ポイント解説:水の描き方の練習方法、モチーフについて>

水や透明感のある物が好きで昔から模写ばかりしてきたので、それが活きているのかもしれません。実際に川の水をすくったり、蛇口をひねったりして動きを観察しています。

幼いころから、意識していなくても絵に透明感があると周りから言われていました。自分の元々持っている感性なんだろうなと思っています。

モチーフについてはとにかく描いていて楽しいものを詰め込んでいるので完全にoo6の趣味です。
これからは金属の装飾品など、自身の得意な質感表現を活かせるモチーフにもどんどん挑戦していきたいです。

 

仕上げ

・左右反転して描く


途中から左右反転をしたまま、しばらく描き進める。
こうすることで、バランスの狂いを直しながら描き進められる。

 

・影と光の演出


乗算レイヤーで、画面下や首の下、手などに、透明感のある紺の影を足す。
光と影の効果にはソフトブラシを使い、大きく淡く入れる。

 


スクリーンレイヤーを追加し、光が当たる明るい部分や、紅葉の白い背景にかかる部分に、淡い光の表現をさらに加える。

 

・全体を統合して調整


全ての画像を統合して色調整し、乗算レイヤーで影色を塗り重ねる。

これを何度か繰り返し、さらに絵に深みを出す。

 

・シャープ効果で質感を加える

 


シャープ100%の効果を2回かけて、全体に鉛筆のタッチのような粗い質感を加える。

 


シャープでくっきりしすぎた口元を、ぼかしツールでなめらかにする。

 

 

全体を見ながら、埋もれすぎている水滴の輪郭や小さな水しぶきを描き足す。

 


まつ毛の輪郭や、瞳の縁取りを黒で足し、目の印象を強くする。

仕上げの段階で何度も拡大縮小し、全体のバランスを見て、足りないところに手を入れる。

 

<ポイント解説:厚塗りの完成タイミングの見極め>

なかなか筆を置くことができなくて、描き込みすぎて調和のとれない絵になってしまい没にすることが多々あります。全体を見て「やりすぎ感」がない範囲で完成させるようにしています。

 

完成

<納品時気を付けていること、おわりに>

お仕事で絵を描かせていただくときは絶対に妥協の無いように、最後の細かい調整にいつもの倍時間をかけて描いています。本塗りも大切ですが、塗り終えた後に全体のバランスを見て加工し、魅力を引き出すことで更に完成度が上がるのではないかと思っています。

心がときめくものをイラストにするのは本当に楽しい! 自分で心底好きだと思えるイラストをこれからも描きたいです。そして私のイラストを見てくださった方と、この「好き」を共有できたらと思い、日々SNSで作品を発信しています。これからも応援していただけたら幸いです。



oo6さんのイラストメイキング、いかがだったでしょうか?

何度も画面全体を見ながら、拡大してこまかく描き込む厚塗りの繰り返しや、画面全体に色を散らしてバランスよく配置し、繊細に色の調和を取っているのがとても印象的でした。

他のイラストも、メイキングのポイントを知った後なら、もっと楽しめます。
oo6さんのイラストはTwitterやお仕事、GENSEKIクリエイターインタビューTikTokのメイキング動画などでたくさん見ることができます。
このメイキングとはまた違った解説もありますので、ぜひ合わせてご覧ください!

oo6(Twitter:@oo6____6oo/Instagram:@oo6____6ooTikTok

SNSを中心に活動し、2023年1月現在Twitterフォロワー14.2万人のイラストレーター。現役大学生でありながら、ゲームのPRイラストなど商業イラストも多数手がける。アナログ、デジタルを問わず儚くみずみずしい印象のイラストを制作し、独自の鮮やかな色彩と透明感のある画風が10・20代の女性を中心に人気を集めている。『ILLUSTRATION2022』掲載、『唐国の検屍乙女』(講談社タイガ 著:小島環)装画。

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編集:坂本彬
技術監修:中村紘子
執筆:kao(Twitter:@kaosketchHP