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学生時代の経験をポートフォリオに表現するには?【中島俊先生 1on1レッスン by GENSEKI学生応援プロジェクト】


GENSEKIでは「学生応援プロジェクト」を企画・推進しています。

今回はグラフィックデザイナーの 中島俊先生を審査員にお招きし、専門学校 福岡デザイナー・アカデミー(2024年4月より。旧名称 九州デザイナー学院)とのイラストコンテストを開催しました。

この記事では中島先生による大賞の3名のポートフォリオのレビューの様子をお届けいたします。

連載目次
1on1レッスンの先生

中島 俊
株式会社エンターブレインでデザイン業務に携わった後、フリーのデザイナーとして独立。株式会社 CARTAgraphicsを設立し、書籍やパッケージなど印刷物のほか、アニメの設定、2Dデザイン、タイトルロゴ、キービジュアルのデザイン制作など多岐に渡り活躍中。『GENSEKI art book』のカバーデザインも担当。

進行
巴孝介
GENSEKIのコンテスト企画運営・進行を担当。


色使いと平面構成に優れた1冊。扉ページを追加して情報量の調整を


1on1レッスンに続いて、ポートフォリオレビューです。1人目は、yuzuyu_okadaさんです。

 

中島先生
全体的にとてもかわいいですね。カラフルなデザインで安定した色使いができています。平面構成のバランスが取れていてとても上手。また、文字組もきれいで読みやすいです。



スキルセットや目次もあってわかりやすいですね。掲載されている作品は学校の授業で作ったものでしょうか? それとも自主制作ですか?


yuzuyu_okada

どれも学校の授業の課題でデザインしました。授業内で時間がなければ家でも制作し、期間はひとつ1か月かからない程度です。作品ごとのコンセプトや素材、文章は、Webで調べながら自分で作りました。画像はPhotoshopで調整し、あとはIllustratorでデザインしています。

中島先生
すばらしいですね。Tシャツデザインもすごくいい。僕だったらこのデザイン、採用します。単純に欲しい。

全体的に、コンセプトカラーを立てて、それにのっとった配色で描かれているので、のっぺりせず色がきいています。色使いは言うことがないです!



さらにブラッシュアップできそうなところや、アドバイスはあるでしょうか?


中島先生

ポートフォリオを全体的に見たときに、色のバランスが取れているゆえにフラットに見えすぎる点があります。

中島先生
「抹茶みるく」の作品を例に説明します。とてもきれいでかわいらしいデザインですが、ピンクなど目立つ差し色をもう1色どこかに入れたら、ロゴにもっと視線誘導ができます。お菓子やドリンクなどの商品パッケージは「なぜこの色使い?」と思えるような配色が使われているのですが、店頭で遠目から見たときに、よく目立ちます。

全般的に、こういったことを日頃から観察し、いつもなら使わないような差し色で伝えたいことに惹きつけられると、よりよくなると思います。



他に質問したいことや、困っていることはありますか?


yuzuyu_okada

ポートフォリオを作るときに余白を作るのが苦手で、内容が詰まりがちなのが悩みです。


中島先生

そこまで詰まりすぎている印象はないですよ。もちろん余白が得意なデザイナーさんはいますが、クライアントさんには情報を詰めてほしい方も多いので、そのままでも大丈夫。説明したいことはどうしてもたくさん出てくると思うので、先ほど言ったアピールの順番だけ気をつければ、中身が充実しているのはいいことです。

もし、それでも余白を入れたいなら、1ページ分を「各デザインの扉」として作品紹介のトップに挿入してはどうでしょうか。右側か左下に文字やタイトルを入れただけの、余白を生かしたデザインを入れてみましょう。一見意味のないページのようですが、クッションになるので、意味はあります。それで次ページから情報を詰めればいい。そうすれば今の自分のペースを崩すことなく、足せると思います。

 

中島先生
また、お茶のロゴデザインのページは、最後のモックアップ写真を1ページ目にするとよさそうです。のれんなど「使われているイメージ」を先にバーンとを見せてから、内容を説明する流れにすると、より見やすくなります。


yuzuyu_okada

ありがとうございます。やってみます。

中島先生
絵も描かれるんですよね。かわいいし、コンセプトカラーを立てて、それにのっとった彩色ができていていいですね。

ポートフォリオに「色彩検定2級(1級を受けるか悩み中)」とありますが、1級も取ってみるといいと思います。実は、僕は一般大学の出身で色の勉強をしていなかったので、勉強している人にどうしても勝てなかったことがありました。色が使えるということはとても強みになります。作品に色彩感覚が活かされていると思うので、この感じでがんばってください。

社会に出てデザイナーになると、プロ同士の仕事がいきなり始まります。いろんな人たちと関わって、デザインがアニメになったり、印刷や紙を選んだり、楽しいこともいっぱい待っています。ぜひがんばってデザイン業界に来てください。


デザイン的な中扉で質の高い構成。独自の画風や素材をストックして今後の強みに


2人目はSakamotoさんです。


中島先生

表紙や中表紙がかっこいいです。中表紙のワンクッションあるデザインページも、いいですね。yuzuyu_okadaさんのときに話した、余白のデザインのようです。

この導入はすごくセンスがあります。画集のような質の高い構成になっていて、ポートフォリオをよく見せられています。見る人の気持ちが落ち着いて、意識を高めて見ることができるんです。

この等高線のような模様は自分で作ったんでしょうか?


Sakamoto

はい、Illustratorのブレンドツールを使って自作しました。


中島先生

いいですね。僕も普段から素材をいっぱい作っておいて、自分で使っています。そうすると仕事で「これどうやって作ったの?」と興味を引かれて、自分の強みになります。こういった素材はどんどん積極的に作っていってください。


中島先生
デカルコマニーのデザイン作品も、素材集を使ったのではなく、自分で作った素材というのが強みになっていますね。お酒や牛乳の瓶に活かしているのもいい。まったくテイストが違うのに、同じ素材でみごとにマッチできている。アナログをデジタル化するというのも、手作り感があっておもしろいです。今後の強みに繋がるいい課題でしたね。

 

中島先生
話を戻して、ポスターコンテストのページですが、アイデアメモやラフまで載せるのは珍しい。どんな意図だったのでしょうか?


Sakamoto

デザインは通常、仕上がったものだけ見せると思うのですが、「できあがるまでにこういう過程もあるんだよ」と見せたかったです。


中島先生

そうですよね、よくわかります。対面なら説明ができますが、ポートフォリオは見せることしかできないので、こういったメモやラフを入れるのはアリですね。かわいらしいし、いいなあと思って見ていました。

 

中島先生
特に「BOOK CAMP」のデザインは、Illustratorで洗練した完成品もいいのですが、フリーハンドの絵がすごくいいです。「U.Ni」の上の文字部分も、字のブレぐあいに味があっていい。Sakamotoさんのフリーハンドはとてもかわいくて味があるし、僕は「これはお金を出せる」と思いました。このまま採用したいくらいです。

全体的にアイデアを削いでいくタイプのデザイナーだと思いますが、だからこそフリーハンドも映えています。洗練された作品の中にフリーハンドがポン、と入るとすごくおしゃれ。

この段階を人に見せるのは営業的にはどうかということもあるし、勇気がいるかもしれませんが、「私はこの路線も出せます」という意識を持って、出すタイミングをあたためておくといいと思います。とてもいいので、この方向性も検討してみてください。

中島先生
この時計は、Illustratorで描いたようですが、すごく細かく作られていますね。ここまでパスが使えて素材も描けるなら、なんでもできる。将来はどんな方向を目指していますか?

Sakamoto
素材とパスの両方を生かした、ポスターデザインなどが好きです。


中島先生

この技術を持ちながら素材も自分で作り出せ、ポスターをやっていくのは、すごく強みになると思います。

ところで、プロフィールのページがとても見やすいのですが、Excelでまとめたのでしょうか?

Sakamoto
いえ、Illustratorで制作しました。Excelは普段ほとんど使っていません。


中島先生

では、余談になってしまいますが、実はデザイナーはExcelが使えるといいんです。仕事の資料がExcelでくることがあり、グラフや表にしてくださいと依頼されることがある。使えるようになっていると強いです。



質問したいことや、困っていることはありますか?


Sakamoto

ポートフォリオを横位置のデザインで作ったのですが、制作する作品は縦長が多いので、配置したときにインパクトがなくなってしまいました。

 

 

中島先生
全部のページでフォーマットが決まっていて、左側にタイトルとコンセプト、右側にアイデア、ラフ、完成キャプションがひとつずつついています。これはインパクトに欠けるようにも思えますが、理にかなっていてとても見やすいです。安定して見れました。

ポートフォリオを見る人は、どうやって作ったのかまで見たいので、説明するページの中にはインパクトを入れない方がいい。これはこれとして見せ方が完璧なので、今の作りは崩さず、インパクトを加えたいなら、新しくページを足しましょう。

インパクト用の扉ページを作り、成果物の看板やモックアップを、バーン! と1ページまるまる見せる。キャッチコピーを入れるのもいいかもしれません。それでインパクトは出せると思います。

中島先生
横位置に縦の作品を入れるのはたしかに難しいですね。右半分に縦作品を入れ、左半分にコンセプトを入れるなど、Contentsページのデザインと近くするのもいいでしょう。

これだけでインパクトがある構成なので、右のスミベタのところに画像を挿入する。トリミングが若干縦長すぎて、横の余白が広く見えるかもしれませんが、その不思議なバランスにおもしろみがあります。横位置のページに縦長の作品を入れることを楽しんで、いろいろ遊んでみてもいいでしょう。Sakamotoさんの実力ならできそうなので、やってみてください。


デザインはコミュニケーションだと伝わる1冊。印刷して実物を見てブラッシュアップしよう


レッスン最後、3人目はair_07さんです。

中島先生
かわいいし、色使いも一番見せたいものを邪魔しない配色ができていていいですね。僕は特に明太子のデザインが好き。全体に言えるのですが、どれもちょっとおもしろい。でもスカしていなくて、見る人に寄り添っている。発注側としてもこういうものはうれしいし、とても好感が持てます。


air_07

文章で遊ぶのが好きで、作品のサムネイルにいろいろと書いています。


中島先生

すべてにキャッチコピーが入っていて、作品に対する愛を感じるし、メッセージも伝わる。「デザインを見る人とコミュニケーションを取ろう」という気持ちが伝わってきます。これはプロのデザイナーでもできる人は少ないんです。見る人への配慮があって、すてきですね。

 

中島先生
しかも、きれいな世界観のものもあれば、「米が欲しくなる!」などおもしろいキャッチコピーのものもある。モチーフにあわせて、熱量や雰囲気を崩さずに素材の良さをそのまま伝えています。

どれもプロが作ったようなポートフォリオになっています。デザイン事務所で仕事した実績があるのではないかと思うほど。将来はどんな方向に行きたいのですか?


air_07

パッケージやチラシ、ポスターを見るのが好きなので、デジタルより紙媒体で活躍できればと思っています。


中島先生

日々の見る目が培われて、自分なりに昇華できているんですね。即戦力で行けると思います。
紙媒体で活躍したいというのは、モノとして実在するのがいいのでしょうか?


air_07

はい。本でも、今はスマホで電子書籍が読めますが、私はそれが少し寂しくて。紙書籍のように形に残るもので、自分の業績を残せたらいいなと思っています。


中島先生

デジタルもいいですが、紙や印刷などアナログもやりがいのある世界です。商品をパッケージングするのはなくならないので、活躍していけると思います。

僕も紙媒体のお仕事をしていますが、とても楽しいですよ。パソコン上でデザインするけど、最終的なアウトプットは印刷。たとえば、パッケージデザインは紙から選べます。紙のプロフェッショナルがいて、手触りやいろんな特徴を教えてくれます。印刷所は特色インクや加工をアピールしてくれる。

それをair_07さんがどうチョイスしてデザインするか。今以上に楽しい世界が待っていますよ。



最初に出来上がりを見せる構成も、カタログ感があって完成度が高いですね。制作するうえで、お悩みはありましたか?

 

air_07
三つ折りのリーフレットのデザインに悩みました。リーフレット感があまりない気がして、納得できていません。特に左側の緑のページがまとまらなかった気がしています。どうしたらまとまりが出るでしょうか?


中島先生

これはこれでわかりやすく、十分見やすいですよ。配色がすばらしい。折ったとき、表紙をめくると出てくるのが緑のページですが、導入としていい内容です。
導入に載っているのが疑問文なので「Q&A」のA(アンサー)がある形にするのは一つの手ですね。

あとは、実際にプリントアウトして、折った状態で手に取ってみましょう。畳まれた状態から開いていくカラクリを利用したアイデアを考えるのも、おもしろいかもしれません。



印刷して実物を組んでみると、意外な発見がありますよね。


中島先生

そうそう。自分で手にしてみると発見があります。また、実際にあるいろんな三つ折りリーフレットと並べてみましょう。客観的にいろいろわかるので、ぜひ一度やってみてください。

作品講評の時にair_07さんのロゴを見て「この人は推しだ!」と思ったのですが、ポートフォリオを見て、やっぱり間違いないと思いました。このまま、自信を持ってデザインしていっていただきたいと思います。



中島先生と生徒さんとのポートフォリオレビュー、いかがでしたか? ぜひポートフォリオ作りのヒントにしてみてくださいね。GENSEKIマガジンでは、ポートフォリオの作り方の連載記事も掲載しています。ぜひあわせてご覧ください!

 

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執筆

kao(X:@kaosketchWebGENSEKI

編集

斎藤充博(X:@3216WebGENSEKI