GENSEKIマガジン

モノづくりを広げる・支えるメディア

アイディアの源はネットの海にあらず!煮詰まった時こそ外に出てみよう!【かのと先生のイラスト教室】

登場人物


この連載では、イラスト作成に関するお悩みを、田中くんがかのと先生と一緒に学んでいきます。今回はテーマは、「知識や経験がアイデアの源になる!」です。

 

イラストレーターになりたい学生。夢はゲーム会社に就職すること。

 

この連載の先生。イラスト・ゲーム・キャラクターデザインなど様々なデザイン、ディレクション等、多岐にわたって活動するマルチクリエイター。

 

この記事を読むと学べること

アイデアが湧いてくる方法

 

全クリエイターがぶつかる壁「アイディアが浮かばない」

今日はいつもと違う感じの絵にしたいな~!

……う〜ん。やっぱりアイデアが浮かばないな~。

 

あら、田中くんお悩みね。

 

あ、かのと先生……! なんだかいつも同じような絵になってしまう気がして、新しいアイデアを盛り込みたいと思っているんですが……。どうすればいいでしょうか。


アイデアがなかなか出しにくいのは、単純に知識不足なことが多いわね。知らない事って頭に浮かばないからね。まずはいろんな物事に触れたり、興味を持つことが大事よ。


田中君は野球好きで、知識もあるよね。だから野球の話をされたらすぐにわかるでしょう? でも、クリケットは知らないから、クリケットの話をされてもわからないわよね。


ということは、クリケットを元にしたアイデアは出しにくくなるわけ。


たとえば、田中君が武器のデザインを考えるときに、野球のバットやグローブを元にしたものが出てくる可能性は高いけど、クリケットを元にしたものを出せる可能性はとても低くなるわね。

 

なるほど。たしかに。クリケットなんて思いつきもしないです。


知ってることって思いつきやすいの。だから、いろんなことに興味を持って、知識と経験を積むことがアイデアマンへの近道よ!


知識はともかく、経験も必要なんですか?


もちろんよ! 知識だけより、経験した上での知識の方がより身につくわよ。


経験か……(そんなに必要なのかな~)。

 

最近はネットで簡単に情報は得られるけど、田中くんは実際に行って見てみたりしてる?

 

え? でも行かなくても、ネットだけで十分じゃないですか? 解説とかも読めるし。

 

「一見は百聞にしかず」! ネットに載ってる情報なんて、一部の切り抜きでしかないわ。その場の量感、空気感、載ってない情報、周りの人たち……いろんな所から情報を得るには、やっぱりその場に行かないとね!


でも、どこに行けばいいんですか?


まずは、自分の興味がある所や、近場でも良いと思うわよ。
    たとえば、美術館や、博物館、映画館や、舞台や、神社仏閣や、国内外の旅行……。アニメやドラマのモデルになってる聖地巡礼なんかでも良いわね!


そうなんですね。ジブリのモデルになった所とか、行ってみたかったんですよね!


いいじゃない! そしたら、そのモデルになった場所の歴史なんかも一緒に調べていくと良いわよ。

 

歴史かぁ〜(めんどいな)。

 

たとえば神社にはいろいろな動物が祀られてたり、神さまの使いになってたりするわね?

 

こちらは「蛇窪神社」の巳の日に開催されている「白蛇神楽」というお祭り。

蛇、狐、兎、狸のコミカルな舞台が楽しかったわ。擬人化のキャラデザのアイディアのヒントにもなりそう!

 

※12日に一度めぐる巳の日は、神様の使いである白蛇さまの御縁日です。巳の日に参拝されることで、より願いを届けてくださると言われております。さらに60日に一度めぐる己巳の日(つちのとみのひ)は、巳の日の中でも一番縁起の良い御縁日です。
この己巳の日には、「白蛇舞」の奉納が披露されております。

 

神社の近くの通りの街灯も白蛇さまの姿だったの! 地域の人達に親しまれているのがよくわかるわね。

こちらは、神社の中にある、「登り蛇」と「下り蛇」の像。

 

登ったり、下ったりって、なにか意味があるのかな?

 

そう! そういうところから調べてみてね! 田中君がファンタジーな背景を描くときには、その世界の中の、文化や文明、宗教などを背景に描くと思う。こういったことを知ってるとアイデアのヒントになるはずよ!

 

なるほど! 結構身近なところにアイディアの源が隠れてるのかもしれませんね。


わかってきたじゃない! もちろん国内外の旅行に行ったりするのもすごく良いと思うけど、まず身近な神社やお店などからでも新しい発見はたくさんあると思うわ。

 

経験も大事と仰ってましたが、どんなことがオススメですか?

 

そうね。たとえば、舞台やライブに出かけるのもいいかもしれないわね。
宝塚や劇団四季などの一流舞台なら、役者さんの素晴らしさもさることながら、生のオーケストラや美術セットなども素晴らしいので、映像では感じられない迫力を体感できると思うわ。
舞台衣装が展示されてるところもあるから、間近で見てみるのもドレスを描く参考になりそうね!

 

宝塚も劇団四季も、名前は知っているけど見たことないや……。

 

美術館もおもしろい展示会や、海外の有名作品を借りてきてた企画展が開催されていることがあるのよ。これを見逃すのはもったいないわよ!
作品集で見るより、発色がよかったり、大きかったり、凹凸を感じたり。
本物を生で見て、筆遣いや息遣いを感じて、感動するのも良い経験になるわね。

 

「本物を生で見る」か……。たしかにネットじゃできないことですね。

 

他にも釣りをしてみたり(山や川、生きている魚を描くときに役立つかも)、お祭りに浴衣を自分で着てみたり(着物の描き方のヒントになるよ)、料理をしてみたり(盛り付けを描くときに参考になるね)

いろいろなことに興味を持って、普段やらないことにも楽しみを見つけてやってみると、表現の幅も広がるし、自分の可能性も広がっていくと私は考えているわ。

 

たしかに、最近の自分の行動範囲って、家と学校とバイトくらいで、あとはゲームやってばかりだから、知識の範囲もその中だけになってるかもしれないな。

 

とくに田中くんみたいな若い世代の人は、いろんなことを経験してみてほしいな。同じことをしても10代で感じること、20代で感じること、30代で感じること......って変わっていくから、それぞれの世代で感じられてお得よ。

極端な話、法律違反と、他人と自分を故意に傷つけること以外は、何でもやってみるといいわよ!


法律違反なんてしないですよ…。

 

田中くんは受取手(ユーザー)じゃなくて、創造提供者(クリエイター)になりたいわけだから、自分からどんどん知識をインプットしていって、作品にアウトプットしていかなきゃ!

 

そっか。もっとクリエイターとして自分から知識をインプットしに動かないといけないんですね!

よし! 今度の休みに神社行って、舞台見て、美術館に行ってくるぞ〜!

 

……それ一日で周るのは無理じゃない…?

 


アイディアの源はこんなところにも!?身近なおすすめスポット

・本屋さん

本屋さんの店内を一周してみましょう。
まずはどんな表紙が多いのか。ジャンルによってレイアウトや配色の違いに気がつくと思います。イラストが多いジャンル、写真が多いジャンル、ピンク系が多いジャンルや、緑や青が多いジャンル。ゴシック体が多いジャンル、明朝体が多いジャンル……。
次に本の内容も気にしてみましょう。とくに平積みになってる本は話題になってることを扱っている場合がおおいです。それぞれの業界で何が流行ってるのか? という視点で見てみると、いろんな知識が入ってくるはずです。


最後に、普段見ないジャンルの本も見てみましょう。児童書、経済誌、料理本、スポーツ、医学、小説、漫画……。新しい発見があるかもしれませんよ!

 

・デパートや商店街

デパートの店内を一周ウインドウショッピングしてみましょう。本屋さん同様いろんなジャンルの商品があると思います。

キャンプやキッチン用品売り場、寝具や紅茶専門店、玩具屋さん、メンズファッション、レディースファッション、カフェやパン、鞄屋さん……。
いろんなお店の展示の仕方、色合い、商品の仕組みや素材、などに気づくはずです。
百貨店だと高級商品も多いので、高い商品と安い商品は何が違うのかなどみてみるのも良いかもしれません。


こうやって物事を知ると、だんだん好きになったり、もっと深く知ったりできるかもしれません。そんな経験が作家性や個性につながることもあるんです。
たくさんインプットしましょう。それが自分の中のアイデアの源になっていくはずですよ!

 

作者・編集・協力

アイコン

華乃都(かのと)(twitter @rubanribbon

ゲーム会社、IT 系会社で、イラストレーター&デザイナーとして勤務したのちに独立。
現在はフリーランスのイラストレーター&デザイナーとして活動中。
専門学校でも現役で講師をしている。
イラスト(ファッション画、水墨画、ゲーム系etc…)
デザイン(グラフィック、パッケージ、UIX、グッズ、etc…)
The Kitten Louis イラストレーター/ エグゼクティブプロデューサー
クリエイティブディレクター、プロデューサーなど多岐にわたる

 

編集

斎藤充博

企業オウンドメディアを中心に企画・制作・編集を行う。

取材協力

蛇窪神社 様