グラフィックデザインってなんだか難しそう。誰か親切な人が教えてくれないだろうか。できれば優しいギャルだといいんだけど……。そんなことを考えていた初郎(ういろう)君のもとに、どこからともなくグラフィックデザインに詳しいギャルが現れました! グラフィックデザインの初歩を学ぶ連載です。
- 名刺のデザインのやり方
- 名刺の入稿データの作り方
登場人物
ぎゃるの
グラフィックデザインに詳しい謎のギャル。その時の気分で優しくしたり詰めたりする。
初郎(ういろう)
グラフィックデザインについては右も左もわからない。できれば優しいギャルに教えてもらいたい。
ちーす。ういろー今大丈夫〜?
ぎゃるのさんこんにちは!
うち5階なのにいつもどうやって侵入してるんですか? ギャルって本当に神出鬼没ですね☆
さて、今日はなんでしょう?
今回は初の! ぅちからういろうにデザインの依頼で〜す!
なんと! ぎゃるのさんから依頼??
まーぅちからっていうか? ぅち経由の依頼?
元ギャルのパイセンからの〜〜〜?
からのぉ〜〜〜〜〜〜?
名刺〜〜〜〜〜〜〜〜!
名刺キターーーーーーーーーーーーーー!
初挑戦です! でも、サイズ小さいからなんとかなる気がします!
このマッシュメガネ!!!!!
まじ名刺舐めんなし!
ヒッ……!! すっすみません!!
(こんな早い段階でおこられ発生??? )
名刺はさぁ〜91×55の宇宙だから……!
宇宙(コスモ)!!????
小さいけれど、可能性が無限に詰まったデザイン宇宙なんだわ。
まじでぼやっとしてると……ブラックホール飲まれっから。
は……はい! ぎゃるのさん、連れてってください……!
デザインの宇宙(そら)へ……!
とりま材料集めとこ〜!
それじゃまずは、名刺に載せる材料集めからやってこ〜。
これ、パイセンの「きびのあやとら」さんの名刺。ちなみに、この連載を書いている人でもあるよん。
連載を書いてるというのはなんのことかわかりませんが、拝見します!
わあなんか……濃い〜。そして透けてるぅ〜〜〜!!
んーなんかインパクトあるかなーって透明PET素材(厚手のポリエステルフィルム)に印刷したらしいんだけど、透けすぎてて意味わからんから変えたいんだって。
なるほど……さすがぎゃるのさんのパイセン……。
今回もこの写真を使うんですか? (なぜ肩書が漫画家・イラストレーターなのにアー写が1番デカいんだ……?)
今回はイラストメインにするって〜。ちょっとしたロゴ的なやつも。あと肩書にライター追加して、あとはポートフォリオサイトの「QRコード」も載せてってさ〜。
「QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です!!!」
あれ?? 口が勝手に……?
そうそう〜QRコード自体の使用は問題ないけど、「QRコード」って名称を記載する場合は今ういろうが謎に口走った文言をどこかに入れなきゃダメだから、名刺に限らず印刷物などで使用する際はいろいろ工夫しろし。
(なんだったんだ今のは……)ええとこれだけですか、案外要素少ないですね。
企業の名刺なら住所電話番号まで載せるけど、今どきのフリーランスはこれくらいが多いね。昔はメールアドレスは絶対必須だったけど、サイトに分かりやすくお問い合わせフォームとか載せてる人が多いから省略されることが増えたかも。
あとは事業内容とかセールスポイントとか記載する場合は裏面に入れる感じがいいかな。
裏面はあくまで補足みたいな感じなんですね。
そだねー。まじ裏面はワンチャン見てくれたらラッキー的なことあるから。片面に情報まとめられるならそのほうがいいかな。
あ、そういえばこの記事の編集担当をしている斎藤充博パイセンの名刺があります。ノンデザイナーの斎藤パイセンが手作りしているようですが、このくらいシンプルな方が受け取る側としてはわかりやすいかもですね。
編集担当ってのはイミフだけど、斎藤パイセンゆっっっる? このくらいのシンプルさアリだわ~。デザインの常識からするとキャッチコピーと名前のサイズが同じなのって有り得ないんだけど、それすら味わいになってんのすご。
まじ何モン? 今度ういろうとぅちでおもしろ名刺バトルする?
しません! 叱られます!
◆point
もし既存の名刺があるなら必ず見せてもらお〜。一部の記載だけ変えたいのか、丸っと一新したいのか、気に入っている部分はどこか、改善したいのはどこか。ヒアリングだいじ。
あと、記載するテキストは必ずデータでもらおう。文字を手打ちするのは印刷ミスにつながるので避けようねん。
頭に入れとこ名刺のベーシック
そんなわけで仕入れた材料で名刺つくってこ〜! ウェイウェイお〜!
うぇいおーーー!!!!
あやとらパイセンの名刺は要素少なめだけど、住所電話メールとか文字情報多めなときは、お品書きのときに教えた「解散と再結成」のノリを思い出してやるといいかも。
▼同人誌イベントの「お品書き」から考える情報整理【盛れる! グラフィックデザイン部】
情報をパーン!とバラしてピシッと組み直すアレですね!
そうそう。というのも、名刺は特に仕上がりサイズが小さいから、文字でしっかりメリハリつけておかないとね。①名前>②肩書(屋号)>③住所電話メルアドの順番で大きさ分けていこうね〜。
確かに住所や電話って本当に必要な人しか見ないから小さくてもいいですもんね。
とはいえ最低でも6ptは必要。6pt以上ルールは冊子とかの印刷物でも同じだけど、名刺は仕上がりサイズが小さいのにつられて文字まで小さくしてしまいがちだから気をつけよ。
その他気をつけたいことまとめたよ〜☆
あ〜ローマ字表記、結構悩むんですよね〜! そして顔の向き……! そんなことまで気にしなきゃいけないんですね……!
確かに内側向いてたら収まりはいいんだけどね〜。
例えば「未来&進行方向」をイメージさせる右向きのイラストを右側に持ってきたらすごくヌケ感出るし。知識だけ頭に置いて、とらわれすぎないようにデザインできたら良いよね。
縦型/横型のイメージも、あくまでイメージと思っておいた方が良さそうですね。
縦型でめちゃくちゃ破天荒なデザインでも、横型でシンプルなデザインでも良いんですもんね。大切なのはオリジナリティですもんね!
そゆこと〜! あとはこーゆーやっちゃいけないこととかもあるからね。そこもちゃんと頭に入れとけばおけおけ。
◆point
いくらデザインが自由で面白かったとしても、極端に小さい文字サイズだったり、マージン(余白)を意識できていなかったしたら台無し。枠を外すにはまず枠に収まってから。
「これってどっちが一般的?」と悩んだら、大抵答えはインターネットの中にあるから調べてみよう!
やっぱりパないぜ黄金比
そんなわけで〜早速レイアウトしていこうと思うんだけど〜とりま最初はみんな大好き、黄金比行っちゃう〜〜〜??
で……出〜〜〜〜〜!! 黄金比!!!
デザイン関係で心くすぐられるワードNo. 1ですね!
まじで名刺みたいなミニサイズから、A0のポスターまで。サイズは変わっても人間が気持ちい〜って思うバランスは同じってのが良くわかるよね〜。まじ黄金比パない。
いや〜ほんっとすごいですよね黄金比〜……でもちょっとぶっちゃけると〜……どうやって使うのかな〜なんて……。 あの貝殻みたいな形にそってパーツを配置するんですか?? なんかおかしなことになりませんかねぇ〜〜〜??
え〜とまずちょっとだけ難しめな話からすると、人間が最も美しいと思う比率が「1:1.618」で〜。
まず正方形を作るじゃん? その中に正円の1/4を作るじゃん? それを繰り返してってなんかもう四角とか見えなくなるまでやってくとお馴染みの図形ができるんだけど〜。
その比率を利用して円形や直径を作っていけば、多くの人の目に馴染むデザインやロゴができるってわけで〜。
??????
まーその辺りをめっちゃ計算して作るのはロゴマークとかで、名刺デザインの肝はとにかくレイアウト(構図)だから。スペーシングのために黄金比を活用するのがいいかな。
スペーシング?? 宇宙の進行形???
そうそう、まじぅちら、リアタイで宇宙だから。
本当は空間の使い方的な意味で、これまでガイド引いたりマージン(余白)意識してやってきたことを、より理論的に効率良くやってく感じ〜。
よく見たらいろんなサイズの正方形がありますが、これをガイドにしていく感じですかね?
イエス! 前にお品書きつくったとき、情報を一旦解散させるって言ったじゃん?
その解散! させたパーツたちを、どの正方形に置くとしっくりくるかを検討していく感じだね。黄金比って回転や反転させても使えて、さらに2個使ったりしてもいいんだよね。
ほらなんかしっくりくるっしょ?
なるほど確かにこれは……
ゴールデンなバランスですねえ???
でしょー。でもぅちが思う黄金比のすごいところって、ガイドとか特に引かずに気持ちいい配置を探っていったら黄金比だった……! ってなるとこなんだよね。
最初のうちは練習でガイド使ってやっていけばいいけど、そのうちしっくりくる配置が自然に身についてくると思うよ〜。
そうか〜。特に意識せず黄金比使えたらかっこいいですね!
てかぅちさー、いっこ気になってることがあって……。さっき、ういろーが出した斎藤パイセンの名刺なんだけどさ……。
お わ か り い た だ け た だ ろ う か ?
わああああああーーーーーーーーーーーーー!!!
サイトーーーーーーセンパぁぁぁーーーイ!!!!!!
ノンデザイナーがテキトーに作った名刺なのに、めっちゃ黄金比!!!!!
すごすぎだよね〜。
ただ、イラストまわりのレイアウトは良いけど、文字まわりがマジでだめ。
左側の空間のアキがなんかキモいからなんとかしろしって言っといて〜。もうちょい左っしょ。どこ置いてんの?って。
はい(言えないっすよ……)。
◆point
デザインのレイアウトだけでなくイラストや写真にも使える黄金比だけど、あくまでガイド程度にとどめてデザインの拠り所にしないように。「このデザインは黄金比なんで〜!」とかデザイナー側から言うのはビミョー。バランスを感覚的に掴むのは実践あるのみ。ウェイウェイオーだよ!
デザイン無限。9155の宇宙を創造しよう
テンションブチアゲるために黄金比からやったけど、名刺の宇宙はまだまだ入り口だから。
大気圏出たあたりってとこですかぁ?
どこにパーツを置くかに始まって、フォント選びや色も検討してたらマジ無限に広がるマジ宇宙。
(たまにすごい普通に無視するんだよなあ)
てことは、思考のブラックホールに陥りやすいってことじゃないですかぁ……!
まじでそれ。だからちゃんとヒアリングしないと永遠に宇宙さまようことになっから。
全ての案件でヒアリングは必須なんですね。えっと、あやとらパイセンは前回インパクトに走りすぎたから今回はスッキリしたデザインを希望されているんでしたっけ?
そうそう。だからこんな風に、レイアウト違いで動きを出したり、まとまり感を出した案から選んでもらうのがいーかな。
う……宇宙やぁ……名刺はホンマもんのデザインの宇宙やぁ……!!!
ね、楽しいよね!
てか今回はイラストは決まってるけど、自分でイラスト描けるなら全面イラストにしたり自分でフレーム作ったりできるわけじゃん。それって超楽しくね?
そうか……! イラストレーターがデザインできるようになると、そういう合わせ技ができるんですね!
うんうん。イラストの発想を組み合わせたらきっとおもしろいデザインできると思うよ〜。
◆point
デザインしているとどーしても「このイラストの腕がもうちょっと下なら……!」とか「反対向きのイラスト欲しい! 」とかが出てきちゃう。傾きをつけたりサイズを変えたり(どの程度アレンジ可なのかはあらかじめ確認しよ)バランスを整えるのがデザイナーの腕の見せ所ではあるけど、自分のイラストならさらに自由度UPだね☆
入稿データを作ってみよう
あやとらパイセンに画像送ったらめっちゃ喜んでた〜。
もう入稿までしちゃって〜って。
やったーーー!! でも入稿データにちょっと自信ないんで、見てもらっていいですか?
おけ。じゃあまずはプリントして校正しょー。
どんな印刷物でもそうだけど、電話番号が載ってたら電話かけて、メールアドレスにはテスト送信して、QRコードが載ってたら読み込むこと。先方からもらったものが間違ってることもワンチャンあるから。
「QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です!!!」
クッ……! また口が勝手に……!
それ一回言えば大丈夫だから。ウケる。
ほんで大丈夫だったら…入稿データを作ってみよ〜ウェ〜〜〜イ☆
よぉ〜し、やるぞ〜! まずはRGB画像をCMYKにですね! これは第3回でやったぞ……暗く沈みすぎないように…っと。よしできた! で保存……ん?
保存形式って何が良いんですか?
▼初心者でもわかりやすい、RGBとCMYKの補正のやり方【盛れる! グラフィックデザイン部】
昔はEPSが主流だったんだけど、最近はレイヤーを統合したpsd(photoshopdata)が推奨されてる〜。背景透過させたい場合は「表示レイヤーを結合」にしないと「画像を統合」にしたら白になっちゃうから注意だょ。それから、不要なレイヤーを削除するのも忘れずに!
ほうほう。で、画像はリンクですか??埋め込みですか?
リンクの方がいいかな〜。この段階でファイル名とか変えないようにね〜リンク切れちゃうから。
はい! 次はイラレ上での作業ですか?
そそ〜。こんな感じでよろぴ。
ひゃ〜結構チェックするところありますね〜。慎重に慎重に……。
未アウトラインやリンク画像不足とかは印刷会社が指摘してくれるけど、納期延長になっちゃう場合が多いから気をつけてね〜☆
は、はい〜〜〜〜! いきなり依頼してきて入稿までさせるってよく考えたらとんでもない無茶ぶりだなぁ……さすがぎゃるのさんの先輩だぁ……。やれやれ〜。
声でてっから。発言も慎重にしろし。
◆point
両面印刷の場合は同じファイル内にアートボードを増やして、「表裏関係」がわかる状態で入稿しよう(会社によっては別のファイルを指定するところもあるので注意)。
また、最近は単色刷りとフルカラーの価格差がほとんど無くなってきたけど、あえて単色刷りしたらオシャレ感アップするまである!
スケールでっかくデザインしよう!
は、はあ……なんとか入稿できた……。
おつ〜。テレレッテテレ〜♪ レベルアップおめ〜。
もう手汗やばいです……。
デザインから印刷に至るまで、大きな責任を感じる依頼でした…。
そりゃそうっしょ?
名刺ってのは初対面の人に「私、こういうもんで〜す」ってのを一目で“わからせ”するためのもんだし。神営業ツールにするか、ただの名前書いてる紙にするかはデザイン次第ってこと!
わからせ…! その通り!!
最初ちょっとだけナメてかかりそうでしたが、いやはや名刺デザイン奥深い。
デザインの難易度にサイズは関係ないことがわかってよかったね〜!
手のひらサイズでも宇宙並にスケール感あるデザインできたら最高じゃね?
はい! もっともっとたくさんデザインして、僕だけの宇宙を創造したいです!
がんばれし〜。
ん? あやとらパイセンからラインきたわ。
ういろう君まじ良いわ〜! 名刺バンバン配るから、無くなったらまたよろしくって伝えて!
かなり気が早いけど、次回はこんな感じにしてもらいたいからまた改めて依頼するね〜!
宇宙スギィ!!!!!!
執筆・イラストきびのあやとら(X:@kibinoayatra/GENSEKI)
グラフィックデザイナー歴16年目。小難しく考えすぎてしまう拗らせ期を経て、一旦デザインと距離を置くため廃業を決意。イラストや広告漫画をメインに方向転換するも、デザインはあらゆるクリエイティブの根底にあるズッ友のような存在だと気付きやっぱ好きだわ〜と思う。基本的なことやコツさえ抑えたらデザインはとても自由で楽しいからマジでみんなやろ〜?ということをギャルのノリで伝えていきたいと思っています。