登場人物
岡山県出身の漫画家。
ブラック企業在籍中、有り金全部溶かしたことをきっかけに10数年ぶりに漫画を描き始める。その流れで専門学校のイラスト科講師となり、それから漫画家となった。
0歳の子どもを育てるエッセイ漫画ブロガー。書籍の出版が決定している。
ブログのマンガ見たよ!
どの話も、めちゃくちゃおもしろいよ! パンチのあるエピソードが多くてびっくりした。あのブログがきっかけで出版が決まったのかな?
はい、そうです。
そうなんです……。書籍の作業とプライベートが忙しくて、更新頻度が落ちています。
現在の活動はブログが中心のようだけど、今後はSNSの活動を増やしていくことも考えている?
はい。ただ、先程のブログの更新頻度とも関連するのですが、まだ子供が0歳でやりたいことがやれていない状態です。
強いエピソードを持っているからこそ「実話」が強調できるキャラクターデザインを!
エッセイマンガに登場させる自分のキャラクターを、「オバケ」と「人間」のどちらにするか悩んでいるということだったね。
はい。現在は「オバケ」で描いているのですが、書籍化するにあたって、編集の方からは「人間」で描いてほしいと言われています。
実は、3年前のブログを始めた当初は、人間で描いていたんです。
「人間」で描いていた時の絵柄が、読者からウケが良くなかったんです。だからといって自分のことをかわいく描くのはどうかなと思いまして。
そこで「オバケ」という中性的な絵柄で描くようになりました。
なのでブログに引き続き、書籍も家族3人全員をオバケで統一したいんです。
個人的には、「オバケ」にするのは、もったいないと思ったな。
「オバケ」だと、時間の経過が分かりづらくなってしまうよね。幼少期・社会人・ママになったたいせんべいさんを表現するのに「オバケ」は変化を出しづらいと思うんだ。
特に、たいせんべいさんは過去のエピソードにパンチがあるから、描き分けしやすい絵柄のほうが良いと思う!
なるほど。
あと、「オバケ」にすることのデメリットのもう一つが、「オバケ」にすることで実話なのかフィクションなのか分かりづらくなることだね。
フィクションなのかなと思うほど、たいせんべいさんのエピソードは強い! こうしたエピソードをたくさん持っているのは、たいせんべいさんの強みだよ。だからこそ、実話であることを、もっと全面に押し出したほうが良いと思う。
じゃあ、人間にしたほうが良いのでしょうか?
人間のほうが良いかなとは思うけど、ここはあえていろいろなオバケのデザインを考えてもいいんじゃないかな。
例えば、バーバパパみたいに等身を高くして、顔・装飾に違いをつけるみたいなことも考えられる。彼らは空想の生き物だけど人間らしさもあるよね。検討してみよう!
新しいデザイン、考えてみます。
エッセイマンガをやっていくなら「絵の美しさ・かわいさ」より「作画コスト」を意識しよう
さっき、自分自身のキャラが人間の時に「かわいくない」と言われたっていう話があったよね。
はい。私も迷っていて、Twitterで人間とオバケでアンケートをとったのですが「オバケ派」が多かったんです。
なるほど。実は、エッセイマンガにおいて「絵の美しさ・かわいさ」はそこまで重要じゃないんだよね。だからかわいさを追求しなくてもいいんだ。あと、作画コストのことを考えると、絵が上手くなることも避けた方がいい。
作画コスト?
絵が上手くなればなるほど、描くのに時間がかかるようになってしまう。そうすると、公開できる作品も、どんどん少なくなるよね。
確かに。
だから、絵が上手くなる努力は必要ないよ。たいせんべいさんの絵は今でも十分見やすいし。
ありがとうございます。
まずは「質よりも量」を重視して、自分の持っているエピソードを初見の人にも分かりやすく伝えることが大事だよ! ちなみに、1日の作業時間はどれくらい?
子育てをしながらなので、1日1時間くらいでしょうか。
そうなると、使える時間は限られてくるので、やっぱり「作画コスト」は抑えたほうが良いね。絵の練習はしない! マンガをたくさん描く!!!!
マンガは、フルカラーと白黒どっちがよいでしょうか?
もちろんカラーがいいけど、時間がかかってしまうよね。かといって、白黒だけだとやっぱりちょっと物足りないかもと思う。そこで、白黒にもう1色足した「2色カラー」で描くのはどうかな? たとえば、「影は黒、背景は青」のようにする。これでもだいぶ華やかになるよ。
配色難しそうですね。
今、Twitterのアイコンの背景色が水色なので、この色を使いながらキャラクターは白黒にするとかどう? あとは、たいせんべいさんの子どもが出るときは、ほっぺを赤くしてかわいさをだすとか。
大事なところや強調したいところに絞って色を使えば、作画コストを下げて良いものができると思うよ!
ブログに誘導するための手段としてSNSアカウントを育てる!
たいせんべいさんはブログをやっているけど、収益化はしているの?
できていません。現在はライブドアブログを使っていて、普通のブロガーは収益化ができないんです。公式ライブドアブロガーになると収益化ができるようなんですが……。公式への道のりは遠くて……。
え……!
そのために、TwitterとInstagramのアカウントを育てよう!
Twitterはフォロワーがそんなに多くはないですが、更新しています。Instagramは1年前にアカウントを作ったきり、何もしていなくて。
たいせんべいさんのコマは正方形に近いので、Instagramとも親和性が高いと思うよ! ここはTwitterとInstagramの両方をやっていこう。 露出できる面は多いほうが良いからね!
がんばってみます。
最近、ブログではSNSで公開している話より2話先まで読めるようにして、ブログに誘導している人も多いよね。これは非常に有効な方法だと思う。
最近よく見ますね。
こうした方法を実践しようとするときには、現在のような「1話完結」ではなくて、一つの話を区切った「短い連載」にしていくのがいいんじゃないかな。それを定期的に出していくんだ。
短い連載ですか。
そう! そうすると続きが気になって、ブログに読みに行くからPVが増えるんだよね! たいせんべいさんはPVが増えて、読者は無料で先読みができてWin-Winだと思うな。
よさそうですね!
過去のエピソードの書き方を工夫してバズを狙う!
たいせんべいさんのエピソードはインパクトがあるので、描き方と更新頻度でバズを狙えると思うんだよね。ちなみに、今まで一番反響があったエピソードは何かな?
「自由帳を破られて男子にキーホルダーを返しにいかされた話」ですね。
私の母はいわゆる毒親です。小学生の時、同級生の男の子と交換日記をしていました。ある日、その男の子から旅行のお土産をもらったのですが、それが母に見つかってしまって。ついでに交換日記も見つかってしまったんです。交換日記は目の前で破り捨てられ、キーホルダーは「今すぐ返してこい!」と言われ返しにいきました。
母に交換日記を見られて恥ずかしかったし、どうして自分だけ友達とノートを交換することが許されないのかとか、いろんな感情がありました。母には「異性に色目使って」とののしられて…。
その詳細な感情をマンガの中に描いてほしいな。辛いかもしれないけど。
当時は辛かったですが、今は吹っ切れています。こういうエピソードがたくさんあるんです。
過去の辛さを作品に昇華できるのは強い! あとは描き方だね!
こういったエピソードは
・感情たっぷりに切なく描く
・あえてたんたんと描く
のどちらかになると思う。
暗い話をあえて淡々と描くのも面白そうだし、あるいは永田カビさんのように心情を超高い解像度で描くのも面白いと思う!
永田さん、面白いですよね。
ちなみに、更新頻度ってどれくらいを目指したら良いでしょう?
分かりました。あと、LINEスタンプも作ったほうが良いでしょうか?
LINEスタンプについては、現時点で優先度は高くないかな。
今は、作品をしっかり発信することが大事。自分のキャラクターが認知されるようになったらLINEスタンプに着手しようか。
書籍化は「できること」の範囲を交渉しよう!
現在進めているという書籍の話を聞きたいな。書籍の報酬にも最近ではいろいろな方式があるけど、印税でもらうのかな?
はい。そうです。
じゃあ、普通の本屋さんで、たいせんべいさんの本が買えるということかな?
はい。ただ、部数はそれほどでもなく、メインは電子書籍と伺っています。
なるほど。それならば、Kindleインディーズマンガでの自費出版という道もあったのではないかな。
Kindleインディーズマンガ。ぬこー様ちゃん先生も活躍されていますよね。
Kindleインディーズマンガは、Amazonの会員なら無料でマンガが読めるサービスだよ。作者は150ページのマンガを提供した場合、作者には1DLあたり30~40円くらい入ってくるんだ。まず、読者が0円で読める時点で強すぎるんだよね。
確かに。
商業出版は時間もかかるし、いろいろなことが出版社の意向に左右されることもあるから、作者としてはリスクでもある。手放しで始めると損するかもしれないから警戒して進める必要があるよ。
収益のことを考えると、Kindleインディーズマンガは魅力的ですね。ただ、どうしても昔から「本を出版」することに憧れがあったので、今回はこのまま進めたいと思っています。出版することで名刺代わりじゃないですけど、無名ブロガーの私でも「こんな実績あります!」と言えると思うので。
確かに、そういう側面では大事だね!
ちなみに、今回出版するマンガはTwitter等に公開することは許可がでている?
一応、ちょっとだけならTwitterで公開することはOKもらっています。
どれくらい……ちょっと担当者に確認しないとですね。
そしたら、できるだけ公開できる範囲を広げられるようにしよう!出来上がったものを、ぼんっと出すだけでは、売れない可能性のほうが高いから、SNSで公開したほうが良いね。
公開できる範囲ってどれくらいを想定すればいいでしょうか…?
99%ですか……! 逆に本が売れなくならないか心配です。
きっと書籍の編集者も同じ心配をするよね。ただ、とにかく露出を多くして、できるだけ多くの人に認知してもらった方が、結果として本の売り上げも上がりやすくなるんだ。これは僕の経験上、そう思っているよ!
なるほど……。
分かりました!
新しいマンガが描けたら、僕にDMしてね!
たいせんべいさんは、強いエピソードをたくさん持っているみたい、楽しみにしているよ!
はい!がんばりますっ!
たいせんべいさんへのアドバイスまとめ
- ブログを収益化するために、マンガをより読まれる状態を目指す
- 強いエピソードを強調できるキャラクターデザインをする
- マンガの作風をきめる(淡々と描く or 心情をしっかり描く)
- 作画コストを意識し、更新頻度を上げる
- Twitter・Instagramのフォロワーを合計3万人にする
- SNSよりブログのほうが先読みできる仕組みにする
【おまけ】書籍化におけるチェックポイント
- 交渉してSNS等で公開範囲できる範囲を広げよう
- 「なんのために」書籍化するのか明確にしよう
- 収益が目的ならKindleインディーズマンガも考えてみよう
執筆者と被験者
漫画
ぬこー様ちゃん (twitter @nukosama)
岡山県出身の漫画家。
ブラック企業在籍中、有り金全部溶かしたことをきっかけに10数年ぶりに漫画を描き始める。
その流れで専門学校のイラスト科講師となり、それから漫画家となった。
代表作は「専門学校JK」「人見知り専門家庭教師坂もっちゃん」「ぬこー様ちゃん絵日記集」など。
被験者
たいせんべい(twitter @taisenbei_kyodo)
書籍出版が決定したエッセイ漫画ブロガー。0歳の子供がいる。毒親エピソードのパンチが強い。
インタビュー記事
執筆
坂本彬
GENSEKIマガジンの編集 / ライティング・マーケティングを担当。
編集
斎藤充博
企業オウンドメディアを中心に企画・制作・編集を行う。