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「ドラゴンのウロコは水玉模様をベースに描く」タカヤマトシアキ先生Q&A連載 第三弾 第2回

 

こんにちは! GENSEKIマガジン編集部です。

以前の記事でクリエイター全力応援コンテスト「獣人」オンライン講評会をレポートしました。

このオンライン講評会では、イラコン応募者のみなさんに質問を募り、タカヤマトシアキ先生に答えていただくQ&Aの時間がありました。その内容に、新たにタカヤマ先生のコメントやメイキング画像を追加し、今回も「Q&A連載 第三弾」として再構成しました。全3回の連載としてお届けします!

第三弾 第1回「サムネイルを目立たせるには色と構図にコントラストをつける」
第三弾 第2回「ドラゴンのウロコは水玉模様をベースに描く」(この記事)
第三弾 第3回「イラスト制作中に『迷う』のは無駄な時間」

答えてくれた人

タカヤマトシアキ(X:@tata_takayamaWebGENSEKI
デュエル・マスターズ、ヴァンガードなどさまざまなトレーディングカードゲーム(以下TCG)でメイン・パッケージイラストを手掛けるイラストレーター。クリーチャーやメカニック、リアル系まで幅広い画風を持つ。

 

Q.先生の描く龍やドラゴンのウロコは、バリエーションに富んでいていつも惚れぼれします。うまく描くコツを教えてください。

A.水玉をベースにして描いてみよう。


タカヤマ先生
僕は、基本的に水玉模様の派生で描いています。まず丸をぽんぽんと隙間なく置いていきます。そうすると丸と丸の間にへこみができるので、そこにまたずらして丸を置く。そして、その丸を半月状のウロコにしたり、伸ばして長いウロコにしたりします。あとは立体にあわせて描く、といった感じです。

爬虫類や蛇のような繋がっているものも、魚のウロコのような一枚一枚独立しているものも、すべて基本的にこの水玉を軸に描いています。慣れると簡単ですよ。自分のYouTubeチャンネルでも質問されることがあり、たまに描いているところをお見せしています。テクスチャで貼る方法もありますが、「いかにも貼りました」となってしまうので、僕は根性で描きます。

ウロコがある生き物は、ウロコがかっこよさの重要なポイントですよね。例えば、東洋龍的なモンスターの元のモチーフになりやすいアロワナ、ピラルク、鯉などは、ウロコが整然と並んでいるので、しっかり描いてあげることがかっこよさにつながります。

正直、僕も描きたくない、めんどくさいと思うときもあります。ですが、そこをはしょるとそれなりの絵になってしまうし、かっこよくなくなってしまうと思います。


Q.先生は1枚の絵にどれくらいの時間をかけますか?制作スピードは昔と今で変化しましたか?

A.20から30時間ぐらい。今の方が遅くなりました。


タカヤマ先生
内容によりますが、キャラ1体で背景ありのイラストだと、ラフがスッと描ければ20時間から30時間ぐらいです。日数にすると3日程度でしょうか。

昔と今だと、今の方がスピード自体は遅くなっています。

10数年前ぐらいからスピードはそこまで変化していませんが、それより前、TCG系のお仕事をいただき始めたころは10時間ちょっとで描き終わっていました。

というのも、そのときは今ほどデザインの造形が細かくできなかったし、しっかり描き込むこともできませんでした。一生懸命やってはいたのですが。

今はデザイン的にもいろいろできるようになり、細部も描けるようになったため、逆に時間がかかるようになった、というわけです。

 

ドラゴマキア」オリジナルキャラクター

最近の例だと、2023年の冬のコミケで発行した個人誌「ドラゴマキア」のイラストは、なぜかとにかく大きく描きたいと思ってB2ぐらいのサイズで作ってしまい、1枚につき30時間ぐらいかかりました。

印刷に出すため仕上げないといけないのにずっと描いていて、製本を手伝ってくれている家族に「もう描くな」と怒られました(笑)。

自分ではもっと描きたいし中身を充実させたい。いいものが描ければもうそれでいいと思っていたんです。でも、進行をあまり考えていなくてその後大変だったので、今は改善しました。


Q.先生はロボ・メカなど複雑な形のキャラを描くときは、事前に三面図や設定画を作りますか?

A.作りません。思いつきで描いてますが、真似はしないほうがいいかも。


タカヤマ先生
僕は三面図や設定画は描きません。描いていてデザインにメリハリがないと思ったら、その場でパーツを付け足したり、消して追加したりしています。この描き方はあまり他にやっている人がいないので、自分の特殊能力のひとつかもしれません。真似はしないほうがいいのかも。僕の中では『アーマード・コア』のようなゲームでパーツ装備することや、プラモデルの組み立てを絵でやっているイメージです。

こうなるまでに何かした、というのも特にないんです。もともとメカは好きで描いていたし、バイクや車も好き。電化製品を見るのも、物がどういう形をしてるのか見るのも好き。日常から情報を得ているので、頭の中にストックが多いのかもしれません。

昔は、線画を描いて、塗り分けして……と順に描いていましたが、途中でパーツを加えるとき大変なので線画をやめ、厚塗りで足していくのを繰り返したら、できるようになりました。なので、これから描こうとする人に向けて何か言うとすれば、根性論になるかもしれません。「やっているうちにできるようになる」ところがあります。

僕が初めてペンタブを使ったときのことです。慣れていなくて使いにくく、デジタル描画にストレスを強く感じていたのですが、マウスを外して、ペンタブだけで画面操作しないといけない状況を作って、1週間ぐらいで無理やり慣らしました。

それと似たような訓練や気持ちが重要かもしれません。デッサンができない人は「とにかく俺は見なくても描けるようになるんだ、やるんだ!」という気合いでがんばる「効率などという浮ついた考えは無用!」という強い意志……。

その気合いがあれば、どんなことも、いずれできるようになるかもしれません。


Q.先生は質感表現をどう考えていますか? 写真資料に寄せようと描くと、拡大したときは質感がわかるのに、引きで見るとよくわからない絵になってしまいます。

A.ライティングをしっかり決め、表現にあわせて誇張する。


タカヤマ先生
質問者さんの絵を見てみないとはっきりとはわかりませんが、引きで見ると沈んでしまうのは、ライティングがしっかり決まっていないからかもしれません。

僕も資料は見ますが、あくまで質感や光の当たり方の確認です。「資料そのもの」と「絵に描きたいもの」は違うはずなので、見たまま描くと違和感があります。

なので、金属のハイライトの入り方や、照り返しの光の反射具合を「絵にはめ込んだらどう見えるか」を考えながら描いています。

ハイライトを入れるだけで金属感がぐっと上がるので、資料よりわざと誇張して描くいたりもします。見せたいところの表現をよりオーバーにしてあげる、強調する、逆に質感を描き飛ばす部分をつくる、などです。

例えばウロコなら、現実ならフワッとしたグラデーションになるところを、1、2枚は白抜けするぐらいハイライトを入れる。ぐっと立体感を出すために、あえてそういった情報を足しています。

金龍銀龍/ストームブリンガー


Q.背景込みのイラストを描くとき、背景が固くぎこちない感じになってしまいます。線画をなくしたり、なるべく直線を引かないなど自分なりに工夫してもうまくいきません。意識することやオススメの練習方法、参考資料があれば教えてください。

A.上手な絵をよく見て真似してみる、そのための知識も入れる。


タカヤマ先生
オススメの練習方法は、とにかくうまい人の絵を見て真似することです。拡大してよく見ると、描き飛ばしてあるところが見つかります。遠くの景色ほど背景色と同じ色調になっていく「空気遠近法」を使うことにもなるでしょう。

また、デジタルで描くと拡大できるため、いくらでも細かく描けます。だからといって手前のキャラと遠景の密度を、同じように描いてしまうと、全体が情報過多になってしまいます。遠くのものはぼやけていくので、遠くなるほどディテールを描き込みすぎないのが重要です。

キャラの奥に街が見えるとして、手前のキャラにはしっかり陰影をつける。街は遠くに行けば行くほど、光の当たっている面と当たらない面の「面」だけで描く。

こうしていくつかの方法で手前のキャラと背景を明確に描き分けていけば、遠近感が出るかと思います。

参考資料としては、有名な『カラー&ライト』を読みました。テキストが多く、実は僕も半分くらいしか読めてないのですが、ある程度の知識はあったほうがいいでしょう。描き方の理屈がわかると、真似もしやすくなりますよ。


>>>第三弾 第3回「イラスト制作中に『迷う』のは無駄な時間」に続く

 

第三弾 第1回「サムネイルを目立たせるには色と構図にコントラストをつける」
第三弾 第2回「ドラゴンのウロコは水玉模様をベースに描く」(この記事)
第三弾 第3回「イラスト制作中に『迷う』のは無駄な時間」

 

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執筆kao(X:@kaosketchWebGENSEKI

編集斎藤充博(X:@3216WebGENSEKI