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「イラスト制作中に『迷う』のは無駄な時間」タカヤマトシアキ先生Q&A連載 第三弾 第3回

 

こんにちは! GENSEKIマガジン編集部です。

以前の記事でクリエイター全力応援コンテスト「獣人」オンライン講評会をレポートしました。

このオンライン講評会では、イラコン応募者のみなさんに質問を募り、タカヤマトシアキ先生に答えていただくQ&Aの時間がありました。その内容に、新たにタカヤマ先生のコメントやメイキング画像を追加し、今回も「Q&A連載 第三弾」として再構成しました。全3回の連載としてお届けします!

第三弾 第1回「サムネイルを目立たせるには色と構図にコントラストをつける」
第三弾 第2回「ドラゴンのウロコは水玉模様をベースに描く」
第三弾 第3回「イラスト制作中に『迷う』のは無駄な時間」(この記事)

答えてくれた人

タカヤマトシアキ(X:@tata_takayamaWebGENSEKI
デュエル・マスターズ、ヴァンガードなどさまざまなトレーディングカードゲーム(以下TCG)でメイン・パッケージイラストを手掛けるイラストレーター。クリーチャーやメカニック、リアル系まで幅広い画風を持つ。

 

Q.絵の構図やキャラ設定を決めるのが苦手です。いくつか案を描き出しても、どれがいいのかわからなくなってしまいます。先生はどのようにして決めていますか?

A.迷わず描く。決め打ちで行く。とにかく仕上げて次に生かそう。


タカヤマ先生
その絵に必要な、「どうしても描かなければいけない」お題をはっきりさせましょう。そして、ズレるものは排除していく考え方がいいと思います。

仕事ではクライアントの要望にあわせて描くので、「要望にどこまで自分なりに近づけられるか」を意識しています。

例えば、TCG系のイラストを描いていて「地味だけど渋くてかっこいい案」と「子どもっぽいけど迫力がある案」で迷った場合。TCGでは絵に迫力があるほうがいいので、渋い方は好きだけどナシ、と決めることができます。キャラを描くなら「キャラの顔がよく見える、キャラ性がより伝わる」案を選びます。

それでも迷ったときは、もう「決め打ち」です。ラフを複数出すこともできますが、そうすると自分の中ではイマイチなものが選ばれることもあるので、僕はしません。自分の中でちゃんと見て、選んで、1案送る。「今回はこれで行こう!」と一度決めたら、戻らず最後まで描き切ります。

迷って両方描いても、どっちがよかったかなんて、わからないことが多い。それなら最初からひとつに決めて、描き切る。出来上がりがよくなかったら、よくなかった点を課題にして、次の絵に生かせばいいんです。その方が成長効率もいいでしょう。

「迷う」というのは無駄な時間です。僕もやりますが、うまくいかないと思いながら描くと、まったく絵が進みません。迷ったらとにかく全体を描き進める方が結果的によくなるし、最終的にはなんとかなりますよ。

ドラゴンメカ娘【藍】


Q.先生はどんなものでも描ける印象がありますが、苦手な分野はありますか?

A.流行の絵柄の女の子は描けません。


タカヤマ先生
実は、僕のなかではかわいい女の子や、人間全般に苦手意識があります。かわいいキャラをメインにしているイラストレーターさんは、ささっと描いたラフがもう、かわいいんです。でも僕がそれをやると古っぽい感じに見えてしまう。なので、本番を描き始めるまでに今風の絵を見たりして直します。

3、4年ぐらい前、継続案件が終わったり、モンスターの仕事が減って、このままだと仕事がなくなるかもしれない、と感じた時期がありました。それで「女の子も描けないと」と、一生懸命描き始めたんです。最初は古くてダサく見えましたが、今風のかわいい女の子のイラストをいっぱい探して学びながら、なんとか自分なりに納得できる、かわいい感じで描けるようになりました。

効果はすごくありました。フォロワーが増えましたし、新規案件数も多くなりましたね。

なので、自分のキャラは最新の絵柄ではないと思います。ただ、今の流行の絵柄になれるか、なりたいか? というとそうでもないので、自分なりのいい絵柄を探したい、形にしたいと思いながら描いています。


Q.正解も絶対もない業界だと思いますが、フリーランスとして生計を立てるためにはどう活動していくといいでしょうか?

A.ニーズにあった絵を描き、しつこいぐらいに宣伝する。


タカヤマ先生
仕事にするという点で重要なのは「消費者がつく絵かどうか」を意識することです。もちろん技術力も必要ですが、ニーズを見るのは大切です。また、クオリティが高ければ高い評価を受けられる、仕事がたくさん来る、と思いすぎないほうがいいかもしれません。

例えばモンスターイラストだけ描いていても仕事は来るでしょうが、それだけで生計を立てるのは難しい。となると、発注が多い「人間、かわいい女の子」も描けるといい。ただ、逆にキャラだけでも厳しいので、メカや何かが描けることをプラスして、より需要がありそうなところに参入する。そこで自分の絵に問題があったら、さらにニーズに向けて修正して描いていく。ビジネスとして成立させることが必要です。

本当はロボやモンスターが好きなのに、ニーズにあわせて女の子ばかり描くようになってしまったら、自分がやりたい道と違ってしまう……なんて話も聞きますが、そんなことでなくなる個性じゃないから大丈夫、と言いたい。真摯に描く対象と向きあい、少しでもよくしようと努力し、継続して描いていければ、個性として認識される形に仕上がっていくと思います。もともと得意なロボやモンスターと、次に身に付けたかわいい女の子を描くスキルをあわせれば、新たな個性が生まれるかもしれません。

それから、今の時代はSNSでの宣伝も非常に大切です。

描いたものはSNSで何度も見せる。1週間ぐらい前に投稿したものをまた出すのはためらうかもしれませんが、どんどんやればいいです。

「自分でもこういう絵がうまく描けるのに、仕事が来ない」と思ったときは、あなたがうまく描けることが、クライアントさんに伝わっていない。自分ではそこそこ宣伝してるつもりでも、消費者やクライアントはそこまであなたの作品やタイムラインを見ていないので、知らないんです。毎日投稿するぐらいの気構えでいいと思うので、しつこいぐらい宣伝しましょう。

フォロワー数を増やすのも効果的です。僕はフォロワーが4、5万ぐらいだったとき、仕事がどんどん減ってやばいと思い、フォロワー10万を目指しました。

絵だけ描いていたいのに面倒とか、必死感が出ているのはダサい、と思う人もいるかもしれません。僕もそのタイプでしたが、フリーランスでいたいなら、それではよくないと、考え直しました。

宣伝や、フォロワー数を気にすることが、精神的にキツい方もいるようですが、フリーランスである以上、ある程度は宿命だと思います。 

ちなみに、自分が10万フォロワーを目指す際、次のようなことを意識して、フォロワー数を増やすチャレンジをしました。

  • 過去絵でも何でも毎日3枚は投稿する
    とにかく自分の絵を見てもらう。何度も投稿した過去作品でも、意外と見ている人は少なかったりします。自身のお気に入りの作品は、何度でも擦るつもりで投稿しました。

  • 今風の絵柄で新規オリジナルイラストを描く(女の子の絵)
    モンスターやメカだけではなく、女の子も描くし、描ける。そういった認識を持ってもらうため、高いクオリティは維持しつつ描き上げようと思い、そのとおりに実行しました。制作過程も投稿して、投稿数を稼いだりもしました。

  • 『100日チャレンジ』をやってみる(途中で挫折しましたが 笑)
    できないかも、と思いましたが、「100日チャレンジはあくまでチャレンジなので……10万フォロワーを目指すのが目的だから……」ということでやってみました。が、見事に遅れ、挫折しました。でも、「チャレンジ」なので、挑戦はしたからある意味成功です!
    とにかく、ありがたいハッシュタグには乗らせていただくように心がけています。

  • どうでもいいつぶやきで自分のタイムラインを埋めない
    これは自分の経験に基づくのですが、「おっ! この人のイラストすてきだな! 見に行ってみよう」とアカウントに飛ぶと、全然イラストが表示されなくて、残念な気持ちになることがありました。
    なので10万フォロワーを目指している間は、できるだけ無用な呟きはせず、イラストを多くタイムラインに乗せることを意識していました。RTなども控えていましたね。

これらの内容を実行したところ、新規のフォロワーやお仕事がグッと増えました。

龍は舞い降りた


Q.依頼を受けたとき、依頼者のニーズと自分の個性にジレンマを感じることはありますか?もしある場合、どのように折り合いをつけていますか?

A.「俺がかっこよく描いてやる!」という気持ちで向かう。


タカヤマ先生
先ほどの話と近いですね。キャラデザが決まっている依頼が来たとき「いまいち自分にしっくりこないデザイン……どうやって描けば……」みたいなパターンはあります。メカが得意な人に動物の依頼が来ることもあります。得意なものじゃないし、どうして自分にこの依頼が来たんだ? と、ストレスに思うこともあるでしょう。

でも、やりようがないと思えるときでも、うまく描く人はどんなものもうまく描くんです。何か道があるはず。

だから必死になって調べて描けばいい。仕事であればしょうがないので、「その程度も描けないの?」と自分に問いかけてがんばりましょう。「他の奴は知らないけど俺はやる、俺しかかっこよくできないぞ」という強い気持ちで描く。折り合いは俺がつけてやったぞ、ぐらいでいいんです(笑)。

じゃあ僕がいつも強いメンタリティでやっているかというと、そればかりじゃないですが(笑)。描けたらクライアントとの信頼にも繋がりますし、「意外と俺、描けるかも」と発見があったりもしますよ。


Q.イラストレーターという仕事を選んでよかったと思う瞬間はいつですか?

A.いつもです。子どものころからなりたいと思っていました。


タカヤマ先生
僕はイラストレーターしかやりたくなかったんです。バイトをいろいろやってみても全くおもしろくないし、毎日ずっとやりたいと思えませんでした。「好きなことを仕事にすると逆に嫌いになる」というようなことを言われたこともありましたが「そんなわけないわ!」と思っていましたし、今でもそう思います。

小さいころから絵を描いていたし、その好きなことをやっていられるなら、それがよかった。もちろん仕事である以上、嫌なこともありますが、他の仕事をするよりずっといいです。

先日、町内会で会計役になったんですが「俺ができるのか?」と不安になりました。それぐらい一般的な業務ができない、やりたくないんです。いつでも絵だけ描いて暮らせるなら、こんなにいいことはないと思った。イラストレーターになれてよかったです。なれてなかったら、何にもできないオジサンになっていたのでは(笑)。

描いてる最中なら「このイラストはかっこよくなりそうだな」というときが楽しくていいですね。だんだん完成に近づくと「そうでもないな」となったりするので、ラフから5~7割ぐらいまでのときの上昇感が、一番楽しいです。最終的に、想像の高得点に届くことはなかなかないですね。

 

 

タカヤマ先生のQ&A、今回もたくさんお話しいただきましたが、いかがでしたか?

配信アーカイブでは、まだまだ記事に載せきれなかった裏話も聞くことができます!ぜひ「会員限定お知らせ」のリンクから、あわせてお楽しみください。

 

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執筆kao(X:@kaosketchWebGENSEKI

編集斎藤充博(X:@3216WebGENSEKI