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【イラスト添削#3】キャラクターの魅力をさまざまな手段で演出しよう!

今回の記事は、『green322先生に イラストの添削をしてほしい人募集!』でご応募いただいた作品を、実際に先生に添削していただく企画、第3弾です!

green322先生プロフィール

Twitterで10万人以上のフォロワーをもつ人気イラストレーター。
美術系大学卒業後中学校の美術教諭として勤務、退職後イラスト制作会社でアートディレクターとして作品の品質管理を担当。
その後ゲーム開発会社でのイラストレーター勤務を経て、現在フリーのイラストレーターとして活動中。

 

なるせ景さんのお悩み

今回の添削対象は、なるせ景さんのこちらのイラストです。

ー今回のイラストで自分が思い通りにいかなかった点、特に気になっていてフィードバックがほしい点を教えてください。

自分の好きな『地雷系』の女の子×『えちかわ』をテーマに、キャラクターの日常を描きました。ゲームが楽しすぎてバイト(コンカフェ)に行くのが嫌だと涙目で訴えているようなイメージです。

流行の絵柄(彩度低め、ツヤやハイライトが少なく、リアルなシワや質感)で制作したつもりでしたが、完成後に改めて見ると、全体的に絵がハッキリせずのっぺりして、つまらない絵になっている気がします。
服飾やゲーミングチェア、パソコンなど、素材感が伝わるように着色できなかった事、迫力が欠ける単調な構図が、原因でしょうか?
説明や台詞がなくともシチュエーションを伝える絵が描きたいのですが、背景や小物の描写が苦手で、上手く伝えられず悩んでいます。

また、全体的な色合いは上手くいったと思いますが、色調が同じになりすぎて、キャラクターが埋もれてしまっている気もします。
同じようなトーンでも、目立たせるところは目立たせる色合いにする方法、パッとシチュエーションが伝わる迫力のある構図の考え方はありますでしょうか?

 

ー普段、イラストを作成する上で困っていること、悩んでいることはありますか?

Twitterなどネットには『上手い絵、綺麗な絵』が沢山アップされていて、比べるとどうしても自分だけの取り柄・持ち味がつかめない事です。

がむしゃらに絵の勉強、イラスト投稿、個人や企業の方のご依頼をお受けしたりと、何年も自分なりの努力を重ねていますが、他のイラストレーターさんに負けないような自分の絵の良さが分かりません。絵の仕事を永続的に続けていくため、『自分の絵』のつかみ方が知りたいです。

 

ー目指している絵柄や作家さんはいますか?

絵柄の面ではrurudo先生、米白粕先生、がおう先生など『えっちでかわいい女の子』な絵柄の方を目指しています。

 

【添削ポイント】キャラクターの魅力を「もっと引き立てるためには?」を考えよう!

添削にご応募いただきありがとうございます!イラストを最初に見た感想は、
「かわいい…!!!」でした。
お顔を可愛く描けるというだけでかなりの長所なのですが、今回はお悩みがいくつかあるということなので、「①描写の質 ②構図 ③全体のトーン」の3点にフォーカスして添削しました。

キャラクターのお顔の描き方は二次元寄りの画風ですが、体つきがリアル寄りのバランスに引っ張られているように見えます。
また、背景のパースに違和感があると、イラストの質を大きく下げてしまいます。パッと見て「ん?」となる部分は、極力減らすようにこころがけると、もっと良くなります

構図は「キャラクターの何を魅せたいか」で考えると、身体の向きや強調する部分がよりはっきりしてくるでしょう。

トーンについては、明度差が少ない状態で色相に統一感を出すと、メリハリのない単調な画面になり「のぺっと」して見える原因になります。色合いで差を出さない場合は、明度や彩度で差をつけましょう。

 

華奢な体つきを意識して、正面構図で見せ場を増やす


①描写の質
人物の等身バランスが現実の人間に近く、少々体つきがゴツく見えてしまっていたため、華奢に見えるよう調整しました。
可愛い系の女の子のイラストは、華奢な方が「らしく」なります。毎回しっかり意識すると、お顔の可愛らしさとのバランスも取れてくると思います。

背景では、椅子の肘置きのパースを調整しました。絵の違和感は描いている途中だと中々分かりにくいものですが、Twitterサムネのような小さい画面で見ると気づきやすいです。
私も仕上がり直前になったら、Twitterの非公開アカウントに投稿して、見え方に問題が無いか確認しています(笑)
また、人工物の描写をもっと詰めて、イラストの質を上げましょう。「固さ」などの質感を意識しながら描いてみてください。

②構図
『涙目で訴えているお顔』が一番魅せたいポイントということで、体の向きを斜めから、カメラに正対するようにしました。よりカメラを意識させることで、鑑賞者と向き合う感じを強調し、訴求力を上げるねらいです。

正対させて、腰~足にかけて、顔と胸以外の見せ場を作るねらいもあります。
上げた足を描くことで前後感が出て、画面がダイナミックになります。スカートのフリルもより描写でき、画面の密度も上がります。
(レース部分は再現が難しかったので省略しております)

手は描くのが難しいですが、上手く描ければ顔並みに魅力的な部分です。こちらも意識して描写の精度をさらに上げていきましょう!

③全体のトーン
このイラストはおそらく、仕上げでピンク系のフィルターをかけ全体をなじませていると思います。(違ったらすみません…!)それ自体は悪いことではありませんが、色合いで差を出さないようにするならば、明度や彩度で差をつけましょう。

具体的な解決策として、「首下や胸下、小物の落ち影を強くする」「胸と小物のハイライトでより立体感を出す」「背景とキャラの色相を違和感ない程度にずらす」などでメリハリをつけました。

上記を添削したものがこちら!

ビフォーアフター

【さらにひと手間】全体の位置調整やエフェクトの追加で完成度を上げよう!

さらにこの絵では、カメラをもっと寄せ、イラスト全体を拡大して画面内にキャラを大きく入れたほうが、より魅力が引き立つと感じました。

また、色相を少しずらしたエフェクトを足し、イラスト全体にさらに色の変化をつけました。

絵の描きこみが単調に感じる部分のにぎやかしや、可愛さがきらめく演出もでき、より完成度が上がります。
「魅せたい部分を邪魔しない」事は意識しつつ、エフェクトは色々試してみてください。

ビフォーアフター

 

添削完了!

添削を加えたイラスト

 

元のイラスト → 添削経過 → 添削完了の変化

【総評】絵の要素を全て「キャラの可愛さを活かす」目的のために考えよう

イラストを描く時、まず「何を魅せたいのか?」を考え、「そのためにはどうキャラを配置するのがよいか?」…という順番で、構図を考えてみて下さい。
鑑賞者が見たいのは、上手い構図ではなく、作者が魅せたい『推しポイント』だという事を念頭に置くようにしましょう。

色とトーンは、統一感を出す場合、添削のように落ち影の強調・人物と背景で色相をずらすなど、他の手段でメリハリをつけられるようになると、より魅力的なイラストが描けると思います。

最初にも書きましたが、可愛い顔が描けるだけで勝ったも同然です。

目の前にあるイラストの方向性をもう一度整理し、何を魅せたいのか決め、メリハリのある画面を心がければ、すぐにもっともっと成長できると思います。お互い頑張りましょう!

 

 

green322先生に イラストの添削をしてほしい人募集!

募集画像

応募はこちら

皆さまからのご応募お待ちしております✨

 

 

 

添削担当
green322
(twitter @green322green

添削イラスト応募者
なるせ 景 (twitter @Naruse_kei

 

編集

kao(Twitter:@kaosketchHP