YouTubeチャンネル「無駄づくり」の藤原麻里菜さんが、まったくの初心者に向けて動画作成のやり方を教えてくれる連載です。今回のテーマは「企画を作る」。「動画の根元は企画」と藤原さんは語ってくれました。
執筆・イラスト藤原麻里菜
(X:@muda_zukuri/YouTube:無駄づくり)
無駄な工作を作るYouTubeチャンネル「無駄づくり」を運営。Forbesの「世界を変える30歳未満の30歳」にも選出される。著書に『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』(ダイヤモンド社)『雑に作る ―電子工作で好きなものを作る近道集』(オライリー・ジャパン)など。
#1 自分の好きなことを企画にしよう(この記事)
#2 撮影の前に手元にある素材を集めよう
#3 Premiere Proの使い方の初歩を覚えよう
#4 イラストを動画にしてみよう
#5 自分の作品をアップロードしよう
はじめに
この記事を読んでるみなさんは、「なにか動画を作りたい」と思っている人たちだと思います。その中でも、「もう動画の内容は決まってるから編集方法を知りたい!」という人や、「動画のことさっぱりわからないけれど、挑戦してみたい」という人までさまざまですよね。
動画、というのは奥深くておもしろいものです。真実をそのまま載せることもできるし、編集次第で簡単に嘘だってつけます。そんな動画について、わたくし藤原麻里菜が5回に渡って講義をしていきますので、みなさんよろしくお願いします。
どんな動画を作るのか? という企画から、投稿する時間はいつがいいのか? というアップロードに関するところまで、すべてひっくるめて講義をしていきます。
講義する人
私は藤原麻里菜といいまして、「無駄づくり」という活動をしています。無駄なものを作っては動画にしてXやInstagramなどのSNSにアップロードしています。
タンスの角をLV100にしました
— 藤原 麻里菜 | Marina Fujiwara (@muda_zukuri) 2023年6月25日
理由は特にないです pic.twitter.com/vrd5AuhiRm
こういったシンプルな動画を作ることが大好きです。短時間だけれど余白のあるような動画を目指しています。ちなみに、もっと凝った動画を作ることもしていて、
スタジオを借りて、ちゃんとした機材でカメラマンや照明さんを雇って撮影するという経験もしてきました。編集はすべて自分でやっています。
企画を立てて、撮影して、編集して、アップロードする。このサイクルをここ10年くらい続けてきました。
専門的な映像作家ではないけれど、インスタントに動画を作ることに関してはなんとなく誇れるものがあるのではないか……と自信なさげに思っております。私なりの講義をしますので、みなさまよろしくお願いします。
動画づくりで一番重要なのは企画
動画づくりというと、撮影や編集が主な作業と思われがちですが、企画が一番重要です。例えば、テレビ番組でもおもしろい企画とそうじゃない企画がありますよね。企画がおもしろければ、撮影や編集がチープでも十分楽しめるということです。じゃあ、どうやって企画を考えていけばいいのでしょうか。
私が無駄づくりを考えついたのは、とてもまっさらな状態からでした。YouTubeで何かチャンネルをやりたいなあと考えていて、そこで、自分の好きな「物作り」をメインにしたいなと思ったのです。
でも、私は物作りが好きだけれど、不器用で、下手。そこで、無駄なものを作る「無駄づくり」としたら、その下手さがおもしろくポジティブなものになるのではないかなと思って、「無駄づくり」というチャンネルを開設しました。
好きなことから企画を考える
誰でもわかってることだと思いますが、まずは自分の好きなことから考えるといいでしょう。自分の好きなものをリストアップするといいと思います。ちなみに私は、当時、洋服も好きだったので「商店街にあるマダム向けの服屋でトータルコーディネートをする」という企画も出していました。
もしかしたら、結婚式用の動画を作りたいという人も多いかもしれません。そういうときも好きなことの登場です。私も少ない友人から結婚式用の動画を頼まれることがまあたまにあるのですが、そういうときは、まずは2人の好きなものを聞いて、それを掛け合わせて作ります。
例えば、『名探偵コナン』が好きな2人が結婚するときは著作権に配慮しつつもコナンっぽい動画にしてみました。レンガの背景を使って、コナンの曲を使用し、2人を紹介するだけで、場が盛り上がりました。
新郎がドラえもんが好きで、新婦がオードリーヘップバーンが好きな人は、ドラえもんの世界とローマの休日を掛け合わせた動画をどうにか企画してみました。ローマっぽいロケーションを探して撮影し、新郎がドラえもんのドンジャラをやる風景から動画がスタートします。
情熱大陸が好きな新郎のために、新郎の会社での風景を隠し撮りしてもらって、それを情熱大陸のパロディにしたサプライズムービーを作ったこともありました。パロディにすることで、おもしろさがけっこう確約されている感じがありますね。
好きなことをコンテンツにする。そうすると、自然とおもしろくなるし、見ている人も楽しめる動画になります。それに、好きなことだから出演する側も楽しくなって、みんなハッピーですね。
「好きなこと」をニッチにするとコンテンツとしておもしろくなる
ただし、好きなことをそのまま企画にすると、けっこう抽象的になってしまいます。例えば、手芸が好きな人が、ただ手芸をするだけの動画。例えば、マフラーを編んだり、ぬいぐるみを作ったり、洋服を作ったりするところを幅広く映している動画。そういったものも否定はしないのですが、もうちょっとニッチにしたほうが、個性が出ておもしろくなります。
「食べ物をモチーフにした刺繍」「10キロのおもりを腕につけて裁縫をする」「武器を編む」など、範囲を狭めたり、自分に何かを課すことでニッチさがでて、コンテンツとしておもしろくなるはずです。もし、やっていて楽しくなかったら、続けずにやめて、楽しいものを見つけるまでいろんなものをトライアンドエラーしていきましょう!
ニッチにする方法は、何かをプラスするということを中心に考えるとやりやすいです。好きなものと好きなものを合体させるといいかもしれないですね。例えば、無駄づくりは、
無駄なものが好き+物作りが好き=無駄づくり
というふうに考えられます。物作りと無駄はかけ離れているようですが、それを合体させることで、新しいコンテンツができあがったのかな、と思っています。
常識の逆を考える
逆を考えるのも一つの手です。例えば、手芸というのは柔らかいイメージですが、それと硬いイメージのものを合体させるとどうなるだろう? そうしたら、「鉄パイプのぬいぐるみを作る」とか「灰皿のあみぐるみを作る」みたいなニッチなアイデアがでてきます。
無駄づくりもそうで、物作りは有用性のあるものを作るのが普通ですが、あえて逆の無駄をタイトルに入れることで、「なんか変だなあ」と人を惹きつけることができてるんじゃないかなあと思っています。
例えば、デイリーポータルZが主催している「地味ハロウィン」も逆をいくアイデアですよね。ハロウィンは目立ったもんが勝ちみたいなところがありますが、そうではなくて、地味だけど「こういう人いる!」という仮装をした人がおもしろいという新しい価値を生み出しています。
みんなが右を向いているときに左を向いてみる。そうすることで、やっぱり目立つし、おもしろくなるし、さらには時代を作ることができるのではないかと思っています。
私も無駄づくりのアイデアを考えるときは「逆」をすごく大切にしています。例えば、「タスクが終わらないと枕が使えないマシーン」を考えたとします。でも、その次に「タスクが終わらなくてもぐっすり眠れるマシーン」のアイデアを考えます。その2つを比べて、どちらがおもしろいかを考えるのです。
まずはタイトルをつけちゃおう
アイデアを精査しながら考えることも楽しいのですが、何も考えずにタイトルをつけちゃって、そこからコンテンツを作りあげることもできます。
これはとても簡単で、言葉を10個くらいてきとうにノートに書き出します。その中から2つ以上の言葉をくっつけて、語感のいいタイトルを作るのです。
例えば、「萌え萌え運動会」という言葉を思いついたとしたら、アニメのキャラクターが運動会をしている絵が浮かびますよね。こうやって、タイトルをつけて、そこから考えることもできます。
炎上しないコンテンツにしよう
動画にしてインターネットなどで配信しようと思っているとき、もしくは結婚式などで第三者に見せようと思っているとき、一番大切なのは、「誰かを傷つける内容ではないか」を考えることです。
何をしても何か言われちゃう世の中になってきたので、全員を傷つけない/不快にさせないコンテンツというのは不可能に近いと思います。でも、なるべくその不快さを少人数に抑えるべく、自分のコンテンツが何か不快になる要素があるのではないかを改めて考えてみましょう。
動画の中で何かを無駄にしていませんでしょうか。私の場合は、無駄づくりと言いながらすべてのものを無駄に使っているので、炎上覚悟という感じではあるのですが……。撮影のためにご飯を用意して、それを食べずに捨てちゃうとかは、ちょっと倫理的にダメですよね。
コンテンツを作っていると、どうしても「おもしろさ」を優先してしまって、周りが見えなくなってしまうこともあります。そんなとき、立ち止まって、倫理的に大丈夫か、おもしろさを優先していないかを考えてみましょう。
また、誰かを冒涜(ぼうとく)する内容だったり、特定の個人を傷つける内容ではないかを改めて考えましょう。友達に見せてウケる動画でも、インターネットに載せた瞬間、またたくまに怒られるということはあるあるです。
先生の顔、上司の顔、家族の顔、バス停にいるおばあちゃんの顔、いろんな人の顔を思い浮かべて、全員から笑顔を勝ち取ったらアップロードしましょう。そのためにも、いろいろな人と知り合って、多様な価値観を自分の中に入れることが大切です。
できるだけインスタントで「持続できる」企画を考えよう
今回は、動画の根源である企画について講義をしてみました。企画の考え方から炎上リスクまでをおさらいしましたが、大切なのは「持続できることか」だと思います。
もちろん、無理に続けることはなく、単発で終わる動画でもいいです。でも、動画作りが楽しいと感じたときに、それを続けられるように、なるべくインスタントに始めて、インスタントに作れるものであることが大切です。
私たちは動画のプロではないので、はじめての動画にはなるべく時間を割かず、ちょっと妥協しながら作り、何回も作品を作っていくにつれて、レベルを上げることをおすすめします。なので、「持続」をテーマにやっていきましょう!
次回は、撮影編です。どういうカメラで撮ればいいのか? 画角は? などをまとめて講義していくので、お楽しみに〜!
#1 自分の好きなことを企画にしよう(この記事)
#2 撮影の前に手元にある素材を集めよう
#3 Premiere Proの使い方の初歩を覚えよう
#4 イラストを動画にしてみよう
#5 自分の作品をアップロードしよう
執筆・イラスト藤原麻里菜(X:@muda_zukuri/YouTube:無駄づくり)