「イラストレーターはどうやって営業すればいい?」 さいとうなおき先生に聞く【イラストお仕事道】第2回

2023.8.17

「イラストを仕事にしたいけど、どうしたらいいかわからない……」そんな悩みを持っている人はいませんか。

この連載では、大人気イラストレーターのさいとうなおき先生に「イラストを仕事にするための質問」に答えていただきました。

今回のテーマは「イラストレーターの営業方法」です。第一線で活躍するプロの知見、ぜひ参考にしてください!

答えてくれた人

さいとうなおき(X:@_NaokiSaitoYouTube
イラストレーター・ユーチューバー。
1982年生まれ。山形県出身。多摩美術大学卒業後、ゲーム会社を経て現在フリーランス。『ポケモンカードイラストレーター』。
YouTubeチャンネル登録者130万人以上を記録。『お絵描き上達テクニック』などの情報も発信中。

Q.営業活動は何から始めたらいいですか?

A.まず仕事に使えるSNSを用意しよう! Webページの開設も重要。持ち込みはハードルが高そう。

ーーイラストレーターを仕事にするならば、仕事獲得のための営業活動も必要です。具体的にどのようなことから始めるといいですか?

さいとう先生
今はやはりTwitterなどのSNS経由で仕事の問いあわせが多いです。そこで導線となるSNSはまず作って発信しておくといいでしょう。

SNSにイラストを載せておけば、ポートフォリオの役割も果たします。それに加えて日常のことを書いておけば、クライアントに人柄もわかってもらえます。

あとはポートフォリオになるWebページを開設しておくのもいいと思います。僕はイラストレーターとしてデビューする前に、シュールレアリスム系のちょっと不気味な絵を載せていたんです。

当時実際に掲載されていたイラスト

すると、そこに「デュエル・マスターズ」というカードゲームの不気味なモンスターを描くお仕事が来ました。これが初めての案件でした。

こんなふうに、クライアントはポートフォリオに載せている絵を参考にして依頼してきます。だから、自分が仕事にしたい系統の絵を載せておいた方がいいですね。

ーー出版社や制作会社へポートフォリオの「持ち込み」はいかがでしょうか?

さいとう先生
持ち込みも効果はあると思いますが、やはりハードルは高いです。僕の経験上、徒労に終わることも多いです。

Q.SNSを見てもらうために、どんな発信をしたらいいでしょうか?

A.人気のキャラのファンアートを描くと見てもらいやすいかも!

ーー先ほど、SNS経由の仕事が多いというお話しをいただきました。いろいろな人に自分のSNSを見てもらうためには、どうしたらいいでしょうか?

さいとう先生
これはあくまでも手段のひとつですが、流行しているもののファンアートを描くというのはあるかもしれません。

今だとVTuberの絵を描きまくるとかどうでしょうか。多くの人の目に留まるし、実際にVtuberの方がイラスト募集をされているのはよく見かけるので。

もちろんファンアートは好きだから描く、というのが大前提です。そこから公式のお仕事につながることもあります。

ただ、公式のイラストレーターになっちゃうと、自由にファンアートが描けなくなるという悩みはあるんですが……(笑)。

ーー旬のトピックを追いつつ、自分の味をアレンジしていくと重宝される人になりそうですね。

さいとう先生
そうですね。結局は自分の作ったコンテンツが一番の営業になると思うんです。過去の仕事を見たからこの仕事をお願いしたいだとか、こういう系統の絵を描いているからこの仕事もお願いできないか、とか。

だから着実に自分のコンテンツを増やしつつ、やりたい仕事をもらえるような下地を作っておくのが大事だと思います。

Q.社会人経験はあったほうがいいですか?

A.必須ではないが、社会に揉まれてわかることも多い!

ーー新しくイラストレーターになる人で「社会人経験はあったほうがいい?」と気にされる方もいますが、そのあたりはどうでしょう?

さいとう先生
僕は必須ではないと思うんです。社会人になるメリットは、根回しやメールのやり取りなど「人を気遣うことを学べる」ことだと思うんですよ。それに、どういう仕組みで仕事が動いているのかの流れを知れるのも大きいです。

ただし、大きな仕事の一部だけを任せられる仕事に就いちゃうと、逆に視野が狭まってしまう可能性もあります。だから、一概に社会人になったほうがいいとも言いにくいですね。

ーーやりたい仕事の業界に入ると学べることも多そうですが、一長一短ですね。

さいとう先生 
そうですね。ただ、社会のルールを知りたいと思っている人は、一度社会に揉まれてみるのもいいかもしれません。社会人になると、自分が中心じゃないということが身に染みてわかります。

Q.イラストの仕事を探そうとしても、条件が厳しそうなものが目につきます

A.独自の勝ち筋を探そう! イラストに別のスキルを組みあわせてみては?

ーーイラストの仕事を探そうとすると、どうしても条件が厳しそうなものばかりがヒットしてきます。

さいとう先生
イラストの仕事を探そうとすると、マンガ動画のイラストや、Webバナー広告のデザインが「スキマ時間に稼げる」というふうによく出てきますよね。

こうした仕事は「単価が安い」「納期がタイト」といった体験談を聞くことがあります。もちろん全部が全部そうではないでしょう。ただ、今からこうした仕事を目指したとしても、なった先で大変だろうな、という気はします。

イラスト市場は、既に参入者が多い。かんたんに参加できる仕事だと、条件も厳しいです。そこで、どんなふうに勝負するかを考えないといけないと思うんです。

ーー難しい……。どのように勝ち筋を探せばいいでしょうか。

さいとう先生
たとえば、イラストに別のスキルを組みあわせるのはどうでしょう。動画編集のスキルがあれば「イラストも描けて動画も作れる」というように仕事の幅も広がると思います。そこが自分の強みになればオリジナリティも出てきます。

また、イラスト以外にも別の業界の知識があるといいです。商流や商習慣などを知っていると、お金にもつながりやすいはずです。

ーーなるほど……。ただ、そういった仕事の仕方は単純な「イラストレーター」というイメージではないような気もします。

さいとう先生
元々、イラストレーターという仕事はそんなにメジャーではありませんでした。最近ではソシャゲなどが流行し、一般の人からもイラストレーターが注目される機会が多くなっています。

その結果としてイラストレーターは増えていますが、イラストを描くというイラストレーター本来の仕事はそんなに増えていないと思うんです。

そういった状況を考えると、あまりイラストレーターという形にもこだわりすぎないほうがいいんじゃないでしょうか。ただし、自分がイラストを描けるというスキルは利用していくんです。

どういうお仕事が来るかは良くも悪くも運の世界です。だから、広く網を張っておいて、何か引っかかったらそこを重点的に注力する。そういう覚悟を持っているほうがいいのかなと思っています。


さいとうなおき先生のインタビュー、いかがだったでしょうか? 連載は続きますので、どうぞお楽しみに!

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