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「迫力のある構図や魅力的なデザインはどこから生まれるのですか?」タカヤマトシアキ先生Q&A連載 第2回

 

こんにちは! GENSEKIマガジン編集部です。

以前の記事で『クリエイター全力応援コンテスト』第1回「ドラゴン限定!国を滅ぼす暗黒ドラゴンイラコン」オンライン講評会をレポートしました。

この講評会ではイラコン応募者のみなさんに質問を募り、タカヤマ先生にお答えていただくQ&Aの時間がありました。その内容を「タカヤマ先生Q&A」として再構成し、全7回の連載としてお届けします。

 

 

タカヤマトシアキTwitterWEB
デュエル・マスターズ、ヴァンガードなど様々なトレーディングカードゲーム(以下TCG)でメイン・パッケージイラストを手掛けるイラストレーター。クリーチャーやメカニック、リアル系まで幅広い画風をもつ。

 

Q.迫力のある構図、魅力的なデザインはどこから生まれるのですか?

迫力がある構図は「そのキャラクターが何をしようとしてるか」が明確なポージングで、なおかつパースが効いているものです。デッサン的には正しくないこともあります。

たとえばガンプラなどのプラモデルのパッケージ画像は、強くパースがかかっていても全体のシルエットがわかりますよね。

さらに顔はこちらを向き、「全体の形状」「キャラクターの顔」「パースのかかった映える構図」と非常に見栄えのある構図になっています。でも実際にプラモを作って、同じ構図で写真を撮ろうとすると絶対にできない(笑)。

あれはパーツを3Dモデル上で小さくしたり、顔を取り外して見える角度にしたり調整しているので、現実的に考えると正しくはありません。

でも、そちらの方がかっこよく見えたり、ときには形も正しく見えたりするんです。だから、適度に「嘘」をつく必要が出てくることもあります。

ただ、「嘘」のカッコいいポーズや構図を正しさを踏まえながら追求するのは、正しいデッサンを追求するよりもある意味難しいです。「このイラストかっこいい」「このパースの効き方かっこいいな」と思ったイラストを参考にして、積み重ねるしかありません。

 

プロを目指して、いわゆる「厚塗り」で描こうとすると、ロボメカ・モンスターの分野はデッサン力がある程度高くないとできないので、独学でも学校でもいいから、まずはデッサンを学び立体を描写できる力を身に着けてください。

ある程度しっかり描けるようになると、正しく描いてるのに何か変に見えたり、かっこよく見えなかったり、壁にぶつかります。

それでも上記の様にイラスト的な「カッコ良さ、見栄えの良さ」を探求し描き進めると「別に正しく描かなくていいんだ」と考え方が変わってくるはずです。それで、ようやくかっこよく描けるようになります。

 

「かっこいい」という感覚は、最初ははっきりしないものです。おそらく多くの人は「こういうのが好き」という曖昧なところから始まります。この時点では、まだ「かっこいい」の正体が見えてない。

描き進めるとだんだん余分なパーツがそぎ落とされ、「自分はこういうのが描きたかった」にようやくたどり着く。そこまで行くと、自分の中での「かっこいい」ができあがって、やっと他人に伝わる形になっていくのかな。

これは、自分の曖昧な「カッコいい、美しい」カタマリの中から掘り出して精製していく感覚に近い。それなりの時間と労力をかけ研鑽を積まないとなかなか難しいですが、みなさんにはぜひがんばっていただきたいですね。

 

オリジナル作品

Q.ドラゴンに武器や装飾を付けたいのですが、なかなか一体感が出ず「とってつけた感じ」になってしまいます。

装飾や模様を入れる場合、ただパーツを乗せるのではなく、筋肉の筋や分かれ目、重なりを意識してパーツの流れや装飾を入れると一体感が出ると思います。

腕一本、上腕ひとつとっても、力こぶは上腕二頭筋、その裏側が上腕三頭筋と、解剖学の本を見るとそれなりにパーツが分かれていますよね。

ドラゴンの頭にヘルメットを被せる場合も、パコっと乗せるだけではなく、首の後頭部までパーツの流れを伸ばすなどしてみてください。体のラインや筋肉のパーテーションラインに沿ってつけ足すと「とってつけた感じ」は軽減されるのではないでしょうか。

 

フィールド・トロポスフィア』/オリジナル作品

Q.デザインを凝りすぎて、ゴチャゴチャしたイラストになりがちです。見やすさを上げるためにはどんなことを意識すればいいのでしょうか?

デザインがごちゃごちゃしすぎるのは、見せたいところも、そんなに見せなくてもいいところも、全部100%で描いてしまうからです。

生き物ならだいたい顔や胸周りを見せたいと思うので、その辺りは100%でしっかり描く。モンスターやドラゴンなら、攻撃してる部位もですね。

そんなに見せなくていい部分……ドラゴンなら後ろ足や尻尾の先などですね。これは、シルエットの形はわかるくらいにして、細部まで描き込まないようにしておくのが重要です。

あとは見せたい部分の彩度と明度を高く、描き飛ばす部分は低めに設定すると、見せたい部分がよりはっきりします。こうすると、いろいろな情報があっても見やすい画面になると思います。ただ、言うのはかんたんですが、描いてみないとわからないところですね。


Q.事前にシチュエーションを考えてイラストを描き、最後に確認してみると、メインが目立たなくなってしまうことがあります。先生はイラストを描く際、どういうことを意識しているのでしょうか?

これも先ほどと同じです。「お城を壊すドラゴン」を描くとして、手前にいる兵士をしっかり描き、壊れたお城もブロックひとつひとつまで描いていると、全体がごちゃごちゃしてしまいます。

「そのシチュエーションの中でどこを一番見せたいのか」「何を見せたら一番そのシチュエーションが伝わるのか」を意識しながら描きましょう。

破壊しているドラゴンを見せたいのであれば、ドラゴンをしっかり描く。破壊された後ろの城門は背景に溶け込むような感じで描く、というふうにすればメインが目立ちます。

ライティングも同じ考えで、ドラゴンだけに光が当たるようにすれば、よりシチュエーションが表現できます。

お芝居では、役者や見せたい部分にスポットライトが当たりますよね。周りに多少照り返しても、みんなスポットライトのところを見ます。

それと同じように、ライティングや彩度と明度の高さを考えて、画面を作るといいと思います。



タカヤマ先生のQ&Aインタビュー、いかがだったでしょうか? 連載は続きますので、どうぞお楽しみに!

 

 

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編集
坂本彬
GENSEKIマガジンの編集 / ライティング・マーケティングを担当。

斎藤充博Twitterpotofu
企業オウンドメディアを中心に企画・制作・編集を行う。

執筆
kaoTwitterHP
イラストレーター&ライター。GENSEKIではインタビューやメイキングを中心に担当。