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「いろいろな画風で描くべきでしょうか? 自分の画風を貫くべきでしょうか?」タカヤマトシアキ先生Q&A連載 第5回

 

こんにちは! GENSEKIマガジン編集部です。

以前の記事で『クリエイター全力応援コンテスト』第1回「ドラゴン限定!国を滅ぼす暗黒ドラゴンイラコン」オンライン講評会をレポートしました。

この講評会ではイラコン応募者のみなさんに質問を募り、タカヤマ先生にお答えていただくQ&Aの時間がありました。その内容を「タカヤマ先生Q&A」として再構成し、全7回の連載としてお届けします。

 

第1回「かっこいいモンスターの描き方を教えてください」
第2回「迫力のある構図や魅力的なデザインはどこから生まれるのですか?」
第3回「どんなふうに色を選んでいますか?
第4回「どんなツールで絵を描いていますか?」
第5回「いろいろな画風で描くべきでしょうか? 自分の画風を貫くべきでしょうか?」(この記事)
第6回「企業にイラストの営業をかけることは可能でしょうか」
第7回「影響を受けたイラストレーターは誰ですか?」

 

タカヤマトシアキTwitterWEB
デュエル・マスターズ、ヴァンガードなど様々なトレーディングカードゲーム(以下TCG)でメイン・パッケージイラストを手掛けるイラストレーター。クリーチャーやメカニック、リアル系まで幅広い画風をもつ。

 

ドラゴンメカ娘【深碧】/オリジナル作品

Q.「いろいろな画風で描けるイラストレーター」と「作家性があって自分の世界観を貫いているイラストレーター」どちらを目指すべきでしょうか?

プロを目指す人が、誰しも悩むところですね。自分は人、メカ、モンスター、いろいろ描けるし描きたい「なんでも屋」です。何を描いても楽しいので、仕事でいろいろな物を描いてても不満がないタイプです。

何でも描ける人のほうが食いっぱぐれないのは間違いないかなと思います。時代に合わせて絵柄を変えやすいし、発注する側も「あの人何でも描けるよね」と依頼を出しやすい。

なんでも描けると断ることもあまりないので、結果としてとりあえず発注しやすいと思われるかなと。

作家性があって自分の世界観を貫いている人は知名度を得やすく、バシッと時代や流行にハマると一気に神絵師的な存在になり、キラキラと輝いて見えます。

ただ、流行の絵柄はうつろいやすいので、実際どこまで安定できるかわかりません。強みが大きい反面、どうしても仕事を選ぶところがあるのではないでしょうか?

 

そこで一番重要なのは「自分がどうなりたいか」です。知名度か、安定か。作家性で売るか、多彩なスキルで多くの仕事を手がけていくのか。自分の基準を考えてやっていくのが一番いいかなと思います。

私も若いころは迷ったこともありました。売れてる人はうらやましいし、自分の画風を確立したいという思いはありましたね。

イラストレーターを始めた時から安定して仕事はあったのですが、モンスターやロボなど、なんでも描ける人は、裏方職人的になりがち。どのタイトルも主人公はだいたい人間なので、知名度が出るのはキャラクターを描くイラストレーターです。

そこで、「人が描けなきゃダメだ」とキャラクターを描く練習をしました。『三国志大戦』のお仕事をいただいて、キャラクターを描くようになったら仕事の幅も増え、結果として、活動全体がいい感じになったこともありましたね。

 

ただ、稼げるからといって無理してまでやらなくてもいいと思います。流行りがどうしても好きになれない、求められてもどうしても描きたくないものがある人もいます。イラストレーターは、なりたくてなった職業のはずなので、自分がどうしたいかを最優先でいいのではないでしょうか。

いろいろなものをいっぱい描いてキャリアを積んでいくと、自然とその人の風味が残って作家性がついてくるので、そこまで悩まなくていいと思います。

 

Q.上手いイラストレーターがあふれかえっている今、仕事を獲得するにはどうしたらいいでしょうか?

日頃からたくさん描く、新しいものを取り入れる、描いたものをとにかくアップする(人に見せる)。仕事でがんばる、イラコンに応募してみるなど、とにかくありとあらゆる方法でコツコツやっていく。こうした方法はたぶん正しいです。他はないんじゃないかな。

 

ただ、その「認識」に違いや差があるところには注意をしてください。たとえば、Aさんは「俺は日頃から研鑽を重ねてる」と言っています。ところが、話を聞くと1日1時間しか描いていない。Bさんも同じように言っていて、1日5時間描いている。

目標を聞いてみると、Aさんは「プロになる」、Bさんは「プロのトップを目指す」と言っています。

新しいものを取り入れるといっても、Aさんは内心「そんなことやっても無駄だ」と思っていて、Bさんは「そうやっていけば先に行けるんだな」とコツコツがんばる。

同じことをしているようでモチベーションも内容も違い、少しずつ現実に差が出ます。1年2年経つと差が明確になってきて、いつの間にかBさんはトッププレイヤーになっている……。そんなことが起こってくるんです。

そして、これはあくまでも私調べなのですが……。私自身も含め、みんな言うほどがんばってないです(笑)。ゲームが発売されればやりたいし、飲み会があれば行くし、締め切りを守らない人もいますよね。

そんな状況ですから、実際に努力している量の差が、売れる売れないに出ているはずです。

 

売れてる人はキラキラしていて、有名タイトルのキャラデザインなどチャンスが突然転がり込んで、パッと出てきた感じがしますよね。だから、何か方法があるんじゃないか? と思ってしまう。

でも売れる人がまったく何もやってないということは絶対にない。チャンスは地道に続けてきたから来たのだろうし、つかめたんです。

SNSやYouTubeなどではいろいろと「バズる方法」が出ているので、参考にするのはいいと思います。でも、コツコツ作品のクオリティを求めていく方が現実的じゃないかと、自分は思いますね。

 

オリジナル作品

Q.継続した案件をいただくにはどうすればいいでしょうか?

私の中で長い継続案件は『デュエル・マスターズ』や『カードファイト!! ヴァンガード』などのTCGです。

こうした案件では看板イラストレーターになるよう心がけていました。ナンバーワンになれば、そのコンテンツの中で目立つし、他でも呼ばれるようになります。

すると、当然次の仕事はバッチリ来ますし、コンテンツの終了の時まで発注をもらえます。

 

同じコンテンツのトップの方を見て「この人ならどう描く?この人よりもっとよく描くにはどうすればいい?」と思って描いていました。

勝ち負けなんて、クオリティの高低はあるにしろ、明確な良し悪しがあるわけではない絵を描く上ではバカみたいな話かもしれません。

ただ、評価をする側には実際はあるし「その人を上回らないと次の仕事はもらえない」ぐらいのつもりで、仮想の「勝ち負け」のようなものを意識したりしてて、戦々恐々と仕事をしていました。

 

発注者の期待を超えようとすることも大切です。発注者が70点ぐらいを想定して発注してきてるなら、80〜90点を出していこうとします。発注側に「こいつはできる!」と強く印象づけるように自分は心がけてます。

最近は「コスパ」「効率」のような話をよく耳にします、たとえば「5万の仕事でそんなにクオリティを求められてもな~」みたいな……。

そういう姿勢だと次の仕事が来なくならないでしょうか? コスト意識は非常に重要ですが、少なくとも描いている間は、より良く描くことに集中したほうが良いと思います。

飲食店に行ったときのことを考えてみてください。500円払って1000円クオリティの料理だったら、次も行きたくなる。500円で500円のものしか出てこないなら、次はまあいいや、となってしまうと思いませんか。

自分もそこまで完璧にできるわけではないですが、少なくとも価格以上、依頼のレベル以上のものを出していこうと思っています。

 

あと私が堂々と言えることではないのですが(笑)、スケジュールと締め切りを守るのは本当に大切ですね。スケジュール厳守は「信頼」を勝ち取れます。これはいろいろな発注者が納得してくれるアドバイスだと思います。


Q.ほとんどの求人の条件に「実務経験」があるのですが、私にはありません。駆け出しの場合、どのように仕事を探せば良いのでしょうか?

おそらくゲーム会社などに就職したいのかなと思いますが、単純にクオリティの高いポートフォリオを出せば「実務経験」がなくともひっかかりやすいと思います。

それがなかなか叶わないのであれば、極端な話ですが「僕はとにかくこの業界に就職して学びたいので、どんな仕事もやります!」とガッツとやる気を押しだしてみてはどうでしょう。実務経験がなくても、「ひょっとしたら」があるかもしれません。

会社の立場に立ってみると、いつも都合よく実力がある人が来てくれるわけではありません。そうなると、実力の次に会社が見るのはとにかく、ガッツとやる気だと思うんです。

以前、一般的な大学を出て、デザインやイラストはそこまで学んでないという人に同じような相談を受けたことがあります。このアドバイスをしたら、ゲーム会社に受かっていました。その人はその後ディレクターになり、何年後かには社内のチームリーダーをしていました。

なので、やる気を前面に押し出すのはそれなりに効果的かなと思います。

 


タカヤマ先生のQ&Aインタビュー、いかがだったでしょうか? 連載は続きますので、どうぞお楽しみに!

 

 

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編集
坂本彬
GENSEKIマガジンの編集 / ライティング・マーケティングを担当。

斎藤充博Twitterpotofu
企業オウンドメディアを中心に企画・制作・編集を行う。

執筆
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イラストレーター&ライター。GENSEKIではインタビューやメイキングを中心に担当。