登場人物
岡山県出身の漫画家。
ブラック企業在籍中、有り金全部溶かしたことをきっかけに10数年ぶりに漫画を描き始める。その流れで専門学校のイラスト科講師となり、それから漫画家となった。
ひのき。かわいいキャラクターイラストが強み。専業イラストレーターとしてすぐにでも生計を立てられるようになりたい。
憧れよりも「やりやすい仕事」に目を向けてみよう
キラキラしてかわいいイラストだね。今すぐ専業イラストレーターになりたいということだけど、目標はある?
年収240万を目指しています。昨年からSkebを始めて30件ほどご依頼いただきました。テーブルトークRPG(以下TRPG)のキャラクター立ち絵もご依頼いただいてます。
TRPG業界のことをよく知らないんだけど、そんなに依頼がくるんだね。
世界観をあわせるために同じ人に絵を頼みたい、という需要があります。私自身も遊んでいるので、その繋がりからご依頼いただくこともあります。
遊びからお仕事に繋がるのはうれしいね。やりたいことは他にもあるのかな?
今の仕事も続けたいのですが、それだけだと目標に届かないのでどう活動を広げたらいいのか……。憧れはライトノベル(以下ラノベ)のイラストです。でもどうやったらなれるのかは全くわかりません。
ライトノベルのイラストレーターになる方法は、大きく3つあるよ!
- ラノベ出版社のイラコンで入賞する
- SNSで大人気のイラストレーターになる
- 直接出版社にポートフォリオを持って売り込む
ひのきさんはどれがいい?
コンテスト、でしょうか。応募してみたいですが、どのコンテストがいいのか……。
大きいものだと電撃イラスト大賞などがある。でもコンテストは毎回レベルが高くて、課題の枚数も多い。ラノベのイラストを描きたいなら、いろいろなキャラクターを描く必要があるけど、ひのきさんは女の子以外の、おじさんとか、犬や馬、家や背景も描ける?
少年、青年は描けますが、おじさんは描いたことがないです。背景も苦手意識があります……。
ラノベの仕事をするなら高い画力が必要になる。女の子だけでなく、いろんなものに興味の幅を広げてスキルアップすることになるので、時間はかかるね。
そこで、一旦はいま持っているスキルで勝負するのはどうかな?
今あるスキルで勝負できるならそうしたいのですが、そんな方法あるんですか?
得意なものだけ描いて仕事をする方法もある。たとえば、キャラクターイラストをLive2Dモデルにして、モデリングもできるようになると、頼んでくれる人はいっぱいいる。
これなら、正面からの立ち絵が描ければいいので、難しいアングルやいろんな人物、背景を描く必要もない。ひのきさんには、こっちの方がやりやすいんじゃないだろうか?
Live2Dはもう描き手が飽和しているのではと思っていました。需要があるんですね。
キャラクターデザインとモデリングまで込みで、マーケットに1体20万で出せば、1か月に1体、12ヶ月で240万は達成できるんじゃないかな。
どうしてもLive2Dの勉強は必要になってしまうけど、イラストが描けるならあとは辛抱強く機能を覚えていくだけ。2か月もあればできると思う。
こちらの方が現実的に思えてきました。Live2D学んでみます!
絵を描く環境を見直し、整えよう
ところでひのきさん、もしかしてだけど、液タブかディスプレイが古くないかな?
液タブの画面を見て描いてますが、3万円ぐらいで買ったのでそこまでいい画質ではないかもしれません。
なるほど。ゲーミング用のモニターは敵がパッとわかるように色が大胆に出る設定になるんだけど、そういう見え方になっていないかな。スマホで見たときに色が違うと思ったことはない?
あります! iPhoneで見たときに、思ったより彩度が飛びすぎているというか、濃すぎるというか……。調整には苦労しています。
iPhoneは正確な色が出やすいデバイスなので、液タブの方に問題があるかもしれない。
10~20万ぐらいのプロ向けの液晶モニターなら色が正確に出るけど、そうでないと色の細かい差が見えづらい。液タブはそのままでいいから、パソコンにモニターをもうひとつ繋げて、そっちで絵を確認するといいよ。
ノートPCなので、HDMIがひとつしかなくて……。あと10.5インチのiPad proもあるんですが、修理が必要な状態です。
それだとPCかタブレットの買い替えになるね。でも今のままだと、色の塗り方を勉強していろいろ覚えても、効率が悪いよね!
色がうまくいかないのがハードの問題だとは思いませんでした。
簡単なイラストや漫画を描くならそこまで気にならないかもしれない。でも、ひのきさんのようなキラキラした彩度の高いフルカラーイラストで仕事をするなら、細かい色の違いはわかったほうがいい。仕事を続けて余裕ができてからでいいから、買い替えを検討しよう。
どれを買い替えたらいいでしょうか? すぐ手が届くものだとありがたいのですが……。
安いモニターや液タブにするよりは、12インチのiPadの方が性能がいいかもしれない。新型が出るタイミングで、旧型の中古を公式で買うこともできるよ。どこでも描けるという意味でもタブレットはお勧め。
ちょっとがんばっていいモニターや液タブにするなら、店頭のお試しやいいディスプレイ持ってる友達に実機を見せてもらって、試すとわかりやすい。買うときはできれば、近くの詳しい人に相談してね。
もうひとつ、これは提案なんだけど、ディスプレイの買い替えができない間に、白黒で線画がきれいに描ける技術を磨くのはどうかな?
どうして線画なのでしょう?
絵を上達させていくと、その過程のどこかで「線画をもっとうまくなりたい」と思うときが来るんだ。ひのきさんもきっとそうなると思う。だったら、いまのうちにやっておいてもいいんじゃないかな。
なるほど……! 実はちょっと苦手意識を感じているときもあります。ありがとうございます。
ひのきさんが好きだという、さいとうなおき先生の動画もヒントになると思うよ!
(YouTube動画さいとうなおき2『【誰でも簡単】絵が上手くなるスグに実践できるテクニック【再放送】』『【超重要】線画の『優先度』知ってますか!?【再放送】』など)
絵を見てくれる人のために、伝えたい内容をもっと考えよう
他に気になることはあるかな?
イラストを描いていると、からっぽになって描けなくなってしまいます。どうインプットしたらいいでしょうか?
それはインプットが足りないんじゃないのかも。描きたいものがない、つまり「絵で伝えたいものがない」状態じゃないかな?
「伝えたいもの」……。ひょっとしたらそうなのかもしれません。
イラストで伝えたいことがなくなると、次に何を描いていいかわからなくなってしまう。その結果、とりあえずかわいいものや華やかなものを描こう、となってしまうことはよくあるよね。
そう言われると……。確かに、一生懸命描いているだけになっていることもあります。
一生懸命描くことは間違いじゃないよ! でも、ただ絵を描くのを目的にしてしまうと、いくらインプットしても絵は変わらない。
そこで、ひのきさんには「サービス精神」をさらに持って欲しいんだ。まず、見てくれる人に喜んでもらえるようにしてみよう。この絵で、どういう気持ちになってほしいか? 描いている絵に設定があるなら、どんなものを描けばそれが伝えられるか? を考えてみる。
そうすれば、絵を見てくれる人に「伝えたいもの」と「そのために描きたいもの」が自然と決まってくるはずだよ。絵を描く前にちょっとだけ立ち止まって考えてみよう!
無理せずできることからやっていこう
苦手なことを避けてしまうのは、逃げとかずるいことかと思っていました。
苦手なことやできないことを無理してやろうとして、絵を描くこと自体が嫌いになったら本末転倒。長い目で見たときは、できることをやっていったほうがいい。
それでこの先もっと報酬を上げたくなったら、頼まれたものを描くだけのところから「誰が描いたか」に価値を出せるようになったらいい。自分のブランド意識だね。ひのきさんは今、そういう具体的なビジョンはある?
まだそこまでは考えていません。
であれば、まずは今日言ったようなことをやって、目標の収入を達成しよう! 達成に近づいたら、その収入でディスプレイ環境を整えよう。そのとき線画がきれいになっていれば、色の探求もしやすくなるよ。
はい。がんばります!
今できることで収入を増やし環境を整えて、自分の武器を磨いていこう
- 今持っているスキルでできることを考えよう
- 色を正確に把握できるディスプレイに変えよう
- きれいな線画を描けるようになろう
- 絵を見てくれる人にサービスできるような内容を考えよう!
執筆者と被験者
漫画
ぬこー様ちゃん(X:@nukosama)
岡山県出身の漫画家。
ブラック企業在籍中、有り金全部溶かしたことをきっかけに10数年ぶりに漫画を描き始める。その流れで専門学校のイラスト科講師となり、それから漫画家となった。
代表作は「専門学校JK」「人見知り専門家庭教師坂もっちゃん」「ぬこー様ちゃん絵日記集」など。
被験者
ひのき(X:@hinoki_sere)
執筆kao(X:@kaosketch/Web/GENSEKI)